第119話 ニューギニア戦線
119 ニューギニア戦線
開戦とほぼ同時に、日本軍は南方作戦を展開していた。
その中で、昭和と照和では大きく変わっていた戦場があった。
ニューギニア島である。
この島の北部(元ドイツ領)には、帝国陸軍がすでに存在していた。
島の南北を中央で分けるように山脈が走っているが、そこにはすでに、レーダー基地
が設置されており、ポートモレスビー方面を見張っていた。
このニューギニア島には、第55師団と第51師団が、駐屯していた。
師団長は、乃木大将の息子たちである。
一旦戦争が始まれば、このニューギニア島は、すぐにオーストラリアを牽制できる場所となる。そのために、彼らは長い時間をかけて島の地図を作り、原住民たちと親交を深めていた。
それ以外にも、ニューギニア師団と呼ばれる民間軍事会社(PMC)の私兵が存在していた。
そのニューギニア島では、50機以上の4発水上爆撃機が爆装して準備していた。
そして、夜の闇に向かって飛び立っていく。ポートモレスビーへの爆撃任務に就いていたのである。
そして、駐留師団もひそかに、英領の国境へと進軍していたのである。
宣戦布告と同時の侵攻作戦であった。
軍隊の戦闘には、新型戦車90式が列を作っていた。
ポートモレスビーには、それほど戦力は存在しなかった。
そもそも、英国は欧州で追い詰められていた。
オーストラリアは宗主国の救援で手一杯の状態であったのだ。
米国製の戦闘機とオートストラリア陸軍が少数駐屯していた。
重要であることは、わかっていたが、主戦場はフィリピンであり、この地がすぐに激戦に巻き込まれるなどとは誰も考えていなかった。
フィリピンでの戦いが大きくなれば、この地の重要性増すために増強されることになったろう。
アメリカ軍が必要性を感じて・・・。
空襲警報が唸る!
突然の事態に戸惑うオーストラリア兵。
それでも戦闘機が舞い上がる。
黎明に浮かび上がる敵のシルエットは、大型の水上機であった。
「よし、水上爆撃機だ、全機攻撃!」
味方戦闘機は12機ほどだが、敵大型機は50機以上もいた。
戦闘機の隊長は、有利を確信していた。
相手は、水上機、しかも爆撃機だ。
7mm機銃が火を噴いて、水上機に突き刺さる。
敵機は、12.7mm機銃を派手に撃ち始める。
何回かの攻撃で何発も命中弾を出していた。
しかし、敵機は何事もないかのように、飛び去っていく。
それどころか、相手が銃撃を始めると、濃密な弾幕が形成され、こちらの戦闘機が討ち取られていく。
「馬鹿な!」
基地に、炎の花が咲き始めた。
玄武の搭載爆弾は800㎏爆弾2発である。
それが、基地を爆破していた。
100発の800㎏爆弾が基地を破壊していく。
そして、爆弾を投下した水上機は、機銃座として、仲間機の援護を開始している。
全く、堅牢だった。
7mm機銃では、全く煙も吹かないのであった。
その日、三度の爆撃があった。
基地は壊滅した。
そして、東部では敵陸軍が越境した。
戦車が火を噴き、兵士が突撃してくる。
そこでは、陸軍の隼が航空支援を行っていた。
一日で数十Kmも進軍する神速であった。
機械化の最も進んだ師団であった。
件の男は、仲間にはもったいぶることは無い。戦車や榴弾砲を余すところなく振舞っていた。
トラックや自動車も同様であった。
依怙贔屓である。
しかし、「だから何だね」男はそういうに違いない。
別に自分のポケットマネーでプレゼントしているのだ、何か言われる必要があろうか。
その日の夜、無惨に破壊された基地に、聞きなれぬエンジン音が響きわたる。
辛うじて生き残った兵士たちは疲れた体を引っ張り上げて、銃を構える。
異様なエンジン音が海上から響いてくる。
サーチライトが海上を照らそうと動き始めたが、その証明が届く前に、その兵士の頭が吹き飛んだ。すでに、基地の近くに、狙撃兵が潜んでいたのである。
それにしても、夜の闇の中で、狙撃が可能なのだろうか。
兵士はまだサーチライトをつける前に撃ち倒されていたのだ。
その事にきづいた兵はいなかった。
海上から次々と携帯式ロケット弾が弾着する。
船が砂浜に到着する。
「何とか守れ、押しとどめるんだ!」
守備兵の隊長が叫ぶ。
「はい!」
船であれば、砂浜で止まり兵士たちがおりてくるのだ。
しかしそれは、砂浜を乗り上げてまだ進んでいた。
砂浜を進んでいるのだ。
「なんだと!」
船のくせに陸を走れるのか!
そう、浮いているために進めるのだ。
次々とそれは上陸してくる。
そしてその前方から、ハッチがおりて、戦車が登場する。
LCAC(ホバークラフトの一種)である。
ガスタービンエンジンは未だ完成していないが、ディーゼルターボエンジンで大馬力を発生させている。
それが、何隻も上陸してくる。
戦車の後からは、アサルトライフルを持った兵士たちが、飛び出してくる。
もはやどうしようもなかった。
基地の兵士は数十人しか残っていなかった。
皆、前線の守備に出発した後であったのだ。
見事に裏をかかれた、まさかの強襲上陸艇が存在するなどオーストラリア兵には理解不能であった。
自分達よりも相当劣る劣等な猿人がこのようなものを作れるはずがないのだ。
きっとドイツの技術に違いない。
しかしその思考はすぐ止んだ。
狙撃がその隊長を即死させたのである。
いまだ誰も暗闇の中で狙撃されるなどと考える人間はいない。
後に多くの兵士たちをあの世に送り込むことになる、狙撃部隊『黒い吸血鬼』である。
彼等は、夜間に兵士を狙撃する。その気になれば一般人も容赦なく狙撃する。
彼等には、白人は皆敵であるという考えしかない。
兵士と民間人の差は特にないのだ。
そういう意味では非常に危険な部隊であった。
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