第118話 ミッドウェー島
118 ミッドウェー島
第二段作戦は、敵空母を壊滅させることで終了する、実際には、破壊せず鹵獲できたことから大成功と言える僥倖を得た。
だが、これからが本番なのである。
今回の強襲作戦は、太平洋での優位を一気に手に入れる必要性があった。
その後にこそ、国策方針、漸減邀撃が成り立つのである。
ミッドウェー、ウェーク、ジョンストン島は、太平洋の飛び石である。
これらを陥落せしめ、太平洋の支配を盤石にせねば、漸減邀撃は不可能である。
そのための布石として、サイパン、沖縄、台湾、硫黄島、父島は要塞基地化が施され、これを占領陥落させるためには、大量の陸軍を損耗させ、その輸送路で邀撃し出血を強いることが可能となるのである。
当初作戦では、すでにグアム島攻撃が行われ、占領が行なわれている筈であった。
占領後は速やかに、要塞化が行なわれ、一年以内に完成させ、ここでも出血を強要するのである。
全く関係のない話だが、その工事を請け負っているのは、ロシアで縦深陣地を作り実績のあるわが社(白兎建設)が請け負っている。
だがこれは、決して我田引水ではない。
先ずは建設重機を多数保有し、海外にも移動させる能力(海運)をもち尚且つ要塞工事を行うのである。これは国内広しと言えども、白兎建設しか成しえない大事業なのである。
話は戻るが、連合艦隊は分散して各島の攻略に向かう。
特にミッドウェーは因縁の島であり、ここだけは絶対に手を抜けない場所であった。
ミッドウェーには、すでに関東軍の抽出部隊が上陸のため進行していることになっている。
その進行する周辺海域は、玄武(2式大艇:4発飛行艇のこと)が対潜哨戒を行い、潜水艦の攻撃を防いでいる筈である。
玄武は、KMX対潜探知機を搭載した対潜哨戒機能を付与したモデルが存在し、すでに数十機が日本、ウラジオストク、日本海、台湾、沖縄などの周辺海域を監視する態勢に移行しているはずだ。
筈というのは、全てが開戦後から開始されるからである。
大戦初期の米国の潜水艦の所在は、太平洋に、60隻程度が存在していた。
そして、無策な日本軍は次々と輸送船を撃沈されていく。
そのような事を許してはならじと第7艦隊所属の対潜哨戒機部隊は、徹底的に敵潜水艦を狩りだして撃沈するために、各地の港に進駐し、この任務を行う。
玄武には、そのために必要な磁器探知機やソナー、爆雷が装備されていた。
そして、輸送船団を護衛するための護衛総隊はすでに発足しており、有栖川宮中将がその指揮を執っている。
日本の生命線は、南方からの輸送なのである。
ロシアには、独自の資源が存在していたので問題はなかった。
満洲でも油田が発見され、モンゴルでは銅山が発見されていた。
実は、苦境に立っているのは日本のみである。
『石油の一滴、血の一滴!』
残念ながらそのスローガンは日本のみに適用されていることに気づいている人は多くない。
ハイオクガソリンすらも、第7艦隊では豊富に供給されていた。
テスラ兄弟の発明は、必要なものを全て発明していたといえるほどの成果を発揮していたのである。
・・・・・・・・・
太平洋の米国の脅威度は非常に低い状態になっていた。
真珠湾の打撃艦隊は壊滅し、空母も鹵獲された。
この状況であれば、昭和の南雲中将も心配なく戦えたであろう。
ミッドウェーには今や大艦隊が周囲を囲んで圧迫していた。
敵航空機がすでに全機が破壊されていた。
「ミッドウェーの米国兵士諸君、私は、連合艦隊所属第7艦隊司令官の咲夜である。」
あらゆるチャンネルでこの放送が流されている。
「今君たちは完全に包囲されている。君たちには、名誉ある戦死か不名誉な撤退かを選択できる。」
男のしゃべる英語は非常に美味かった。
「日本兵であれば、死をもって終わるところであろう。しかし、君たちは、命を重んじる民族であることを知っている。こちらはいつでも艦砲射撃を開始することができる。しかし、基地を無傷で手に入れたい。時間をやろう、撤退するならば今だ、一度砲火を交えれば降伏を許すことは無い。全員が名誉ある戦死となる。これは脅しではない。事実となる。」
「時間が惜しい、今すぐ、撤退を開始せよ、これが最後の警告である」
ミッドウェー島には800名程度の守備兵しかいない。
彼等は、恐怖した。
島を包囲している艦隊は、巨大であった。
航空機による攻撃は一瞬で撃砕された。
艦隊直掩の戦闘機隊は、水上機や訓練の足りない攻撃機など一瞬で撃墜した。
相当な練度を誇っているに違いない。
「一発だけ島に砲撃する、これによって判断せよ」
長大和型の46糎砲が火を噴いた。
島の一画に大爆発が発生した。
彼等の簡易の陣地では、全てが終わりそうな爆発であった。
ミッドウェー島の兵士は降伏し、撤退を選んだ。
これにより、島は、無傷で占領できたのである。
ミッドウェー島には、すでにサイパンを出発した陸軍と白兎建設が向かっていた。
彼等は抵抗しても全員が数日以内に死に絶えていたに違いない。
ジョンストン島やウェーク島では戦闘が行われ、帝国海軍にも被害が出たという。
だが、孤立無援の島などどのようにしても維持は不可能である。
開戦数日にして、これらの島々は陥落した。
ミッドウェー島から何とか逃げ延びた兵士たちは、戦艦の主砲の恐怖を上官たちに強く語った。
そして、オアフ島の兵士たちも、艦砲射撃の絶望的恐怖を思い起こしたのである。
これらのことは、あらかじめ計画され、多くの兵士たちに、戦艦の恐怖を刷り込むことを目的にされていた。
機動部隊の有用性を消すための印象操作でもあったということである。
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