第108話 連合艦隊

108 連合艦隊


1941年(照和16年)12月1日 第八回御前会議で、12月8日の開戦が決定される。

「ニイタカヤマノボレ1208」の電文が発せられる。

既に、真珠湾攻撃に参加する機動部隊は北方の海の波を切り裂いて進んでいた。


攻撃中止の電文も用意されていたが、そんなものは使われることなどない。

とある提督は、覚えようともしなかった。


真珠湾攻撃に向かった機動部隊は、南雲忠一中将を指揮官に、

第一航空戦隊「天城」「赤城」

第二航空戦隊「蒼龍」「飛龍」

第五航空戦隊「瑞鶴」「翔鶴」


水上打撃艦隊は、山本司令長官が直卒し、

第一水上打撃艦隊「大和」「武蔵」

第二水上打撃艦隊「長門」「陸奥」

空母護衛戦艦戦隊「金剛」「比叡」「榛名」「霧島」

第三航空戦隊 艦隊直掩 「瑞鳳」「祥鳳」

巡洋艦「利根」「筑摩」「阿武隈」などを主力とし、空母に搭載された攻撃航空部隊も戦闘機192機、攻撃機162機、爆撃機162機の合計516機という連合艦隊の乾坤一擲の最大戦力だった。


航空機の折り畳み翼採用で大幅に搭載機数を増やすことに成功していた。

さらに、空母艦隊を空襲から守るために、瑞鳳、祥鳳の改装空母も出撃している。

常に、上空直掩を行うのだ。


だが、この連合艦隊すら霞んで見えるような、艦隊が後方を驀進している。

空母輪形陣を採用して進む艦隊。

国旗には新ロシア国旗が採用されていたが、今しがた変わって旭日旗を掲げた。

その下には、濃紺に白い満月が染め抜かれた満月旗。

日月神教はこの旗を使うのである。

それは、太陽によってこそ夜光る満月を表している。

旭日の陰こそが、『』なのである。


新ロシア太平洋艦隊と呼称されていた艦隊は、今や、帝国海軍連合艦隊第7艦隊となったのであった。


その艦隊の構成は途方もないものであった。

超大和級戦艦、ロシア名、戦艦(全長300m、長大和と呼んでも差し支えない)1番艦「ニコラ・テスラ」2番艦「ダン・テスラ」の2隻、改造空母「加賀」、「土佐」。

そして新型巨大空母、航空母艦(全長330m)1番艦「玉龍」2番艦「兎龍」

その巨大艦に付き従う重巡、軽巡、駆逐艦は50隻以上に及ぶという一大機動部隊であった。


帝国連合艦隊に比肩するほど規模が大きいのである。

その艦隊の中には、帝国の旧式戦艦の「伊勢」「日向」「扶桑」「山城」も存在している。

奇妙に立ち昇った艦橋をぶった切り、通常の戦艦の艦橋に変更、後部砲塔を撤去し、缶・タービンを新型に換装し、空いた部分には、ロケットを満載している。(50発搭載)

ロケット戦艦として運用されることになったのである。

前部にあった砲塔は、41糎連装砲に換装されており、艦隊戦こそ参加しないが、陸上への攻撃には参加することが十分可能である。(2連装2門)


これら、様々な艦船が存在するが、一つ特徴を挙げるならば、それは対空兵装の充実度である。各種レーダーをはじめ、機銃、対空砲をところ狭しと搭載している。

ある種の強迫観念に迫られて載せたような盛り方であった。


テスラ電気通信社で開発されたレーダーが各所に採用され、対空砲にはボフォース兎製の40mm、88mmの対空砲、そして同社の5インチ両用砲がまさに隙間なく立ち並ぶハリネズミのような艦船が並んでいる。

それは、連合艦隊の戦艦などとは全く違う様式である。

このころの日本艦には、まだ隙間がいっぱいあったのだ。


だが、強迫観念に駆られた男は、隙間なく対空砲を積むよう命じていたのだ。

それは砲弾にも表れており、徹甲弾よりも三式弾(対空榴弾)の数の方が多く積まれている。勿論3式弾(皇紀2603年はまだ)であるため、日本艦には、まだないのだが。


さらに驚くべきことだが、空母艦載機の数は、戦闘機192機、攻撃機200機、爆撃機200機の592機と途方もない数字である。

折り畳み翼の採用と空母の大型化で一隻当たり140~160も搭載しているのである。


帝国軍は伝統的に3機編隊だが、第7艦隊では、ドイツで開発された4機編隊を採用している。(フィンガー4あるいはダイヤモンド隊形を構成する)

なお、戦闘機は紫電改、攻撃機は天山、爆撃機は彗星である。

昭和の彗星は空冷エンジンが日本ではなじみがなく、整備に手間取った、しかし、この世界では、ドイツ人技師が多数おり、しかもハインケル社まで来ていたので何の問題もなく整備できていた。

空冷星形エンジンは、ディーゼル社が開発し、順調に改良してきた2列18気筒のエンジンで、カウルなどの装着により、熱の発散に対応できている。

直径を大きくしていたため、順調に気筒数を増やすことが出来たのである。


そのハインケル社は、燃料噴射(ネ)式エンジンの開発を進め、局地防空戦闘機の開発を行っている。日本でキーマンになるはずの種子島時休は、航空本部長命令で、ハインケルの研究所に詰めている。

というかすでに完成しているので、今は改良中である。

しかも、耐熱合金(ニッケル系合金)もすでに準備されていたりする。

研究は、ターボジェットからターボプロップ、ターボファン、ターボシャフトへと広がっている状況だった。


シコルスキーアビアーツでは、ガソリンエンジン式のヘリは製作済みであったが、現在は、ターボシャフトエンジン搭載のヘリを鋭意開発中なのである。


対潜駆逐艦はいよいよ、対潜ヘリコプターへと取って変わられる時代がすぐそこに来ていたのである。


第7艦隊だけだが。






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