第107話 第二次世界大戦
107 第二次世界大戦
1940年
ドイツ軍は破竹の勢いでベネルクス三国とフランスへと侵入した。
世界中がこの電撃戦で動揺した。
ソビエト軍はこの間に、バルト三国を攻撃、フィンランドへ侵攻を開始している。
電撃戦で危機に陥った英仏連合軍は、ダンケルクに集結し、撤退を開始する。
勢いにのったドイツ軍は進撃を続け、空軍が上空援護を行なう。
さらには、沖合にUボートが複数配置され、大型船に雷撃を浴びせる結果となった。
史実では、何とか35万人の兵士が、イギリスに帰還できたはずが、なぜかこの世界では、地獄のような景色を現出せしめたのである。
これは、ドイツ空軍の総監ウーデッドが絶対に、逃がしてはならないと厳命したためである。
日ごろ、飲んだくれのウーデッドが、上司であるゲーリングにすら噛みつき、空軍と海軍を動かしたのである。
砂浜では大量の兵士が吹き飛ばされ、海上では当たり一面に、船が燃えていた。
波間に、浮かんだ兵士たちは、重油塗れで、すぐに呼吸不全で、死亡してしまう。
生き地獄とはまさにこのことである。
だが、このウーデッドの進言により、英仏兵士30万人が死亡した。
ウーデッドは、作戦の神『モルトケの再来』と評判を挙げる結果となった。
こうして、ダンケルクの戦いは、幕を閉じた。
その後パリは無血開城される。
英仏はこの損害で、非常に厳しい状況に置かれる、何としてすぐに米国の参戦が無ければ両国に明日はないことは明白になった。
そして、フランスを瓦解させたドイツ軍はバトルオブブリテンへと移行していくことになるのだが、ここでまたも、『モルトケの再来』が
「メッサーシュミットBf109の航続距離は短い、ここは、同盟国の日本の戦闘機を使うべし」
今迄、飲んだくれで、女に目のない男が、ここにきて開眼したのだろうか。
しかし、ダンケルクにおいて目覚ましい成果を上げたウーデッドの意見を無碍にすることもできなかった。
幸いにも、ドイツには、なぜか日本製『隼』が100機ほど届いていた。
この隼は、零戦である。航続距離だけはとんでもなく長いのである。
勿論100機では足りないので、Bf109も戦闘に参加するのだが、格闘戦と航続距離にすぐれたこの航空機は、たちまちスピットファイアを撃墜していく。
Bf109では、英国上空に着くまでがやっとだが、隼は余裕で空戦を行い、フランスまで帰還することが可能だった。
すぐに、100機単位の注文が入った。
そして、それは、シベリア鉄道で輸送されることになる。
この期間は、シベリア鉄道での輸送が可能だった。
ソビエト・ロシアは休戦中、ソビエト・ドイツは同盟中であったからである。
日本としても、ドイツに乗っかるためにも勝って貰いたいところがあったのだ。
だが、世界は混沌の神に愛されているのだ。
攻勢に気を良くしたヒトラーは、後に独ソ戦を開始するのだ。
そもそも、ソ連軍はフィンランド戦争で撃退されており、スターリンの大粛清により人材枯渇が明らかに成っていたのである。
これらの軍事衝突および行為について、連合国軍は危機感を強めた。
米国は、ドイツへの戦闘機供与を理由に、くず鉄の禁輸、日本人資産の凍結を行う。
そもそも、中華を唆して、満州に奇襲攻撃を掛けさせた国が、このような行為を行うのである。
ドイツへ戦闘機を売却したのは、新ロシアの武器商社である。
日本の設計だが、劣化コピー版なのである。
流石に、全ての機密を含んだ零戦を輸出するわけはなかった。
それでも、航続距離、戦闘力とも十分に使用に耐えたものになっていたのである。
1941年(照和16年)8月 石油の対日全面禁輸
これにより、国内の8割を米国からの輸入に頼っていた石油が絶たれたのである。
1941年(照和16年)11月 ハルノート手交。
事ここにおいて、大日本帝国は、米国との戦争に打って出るしかない状態へと追いやられる。
石油、屑鉄は、経済を回していくうえで必須のものである。
それを止められるということは、文明をすてて、原始人に戻れというにも等しいことである。
この世界では、日中戦争は起こっておらず、北部インドシナ進駐も行われていないが、やはりこのような状態になったことは大変遺憾なことである。
「だから、言ったでしょう。どのように努力しても、戦は起こる、こちらが仕掛けなくとも、仕掛けられるのだと、これが歴史の必然というものなのです」
連合艦隊旗艦『大和』の長官室で、その男は言ったのである。
連合艦隊司令長官に親補された山本五十六はうなだれるしかなかった。
だが人々は知らない。
石油はすでに存在している事実を、そして屑鉄も十分に存在していることを。
石油は、皆が大変喜んだ油田で猛烈に産出されていた。
精製も行われていた。この土地はいつ、とり返されるかもしれない場所なので、汲めるだけ汲めというスローガンのもと、24時間体制で産出を行っているのだった。
屑鉄は、満州で十分な自動車(屑鉄の原料)が提供されていた。
日本でもはるかに、自動車の登録台数が多かった。
新ロシアにも多数の自動車が存在したので、集めれば集まるだろう。
但し、見える人間には見えるだけで、情報はかなり隠ぺいされており、日本の人々はこの仕打ちに怒りを覚えた。
「ドイツに乗り遅れるな」日本国民は、鬼畜米英を倒すために闘志を燃やすことになる。
だが、その頼みのドイツは、勢いがつきすぎたのか、独ソ戦を開始してしまう。
1941年6月、ドイツ総統アドルフ・ヒトラーはバルバロッサ作戦を発動、突如としてソビエトに向かって進軍を開始する。
ヨーロッパの大半を占領し、バトルオブブリテンでも優勢。
英国は、レーダーを使った防御戦術で良く守っていたが、航続距離が長く、格闘性能に優れる隼は厄介な相手だった。
それに、ダンケルクで大量殺りくされた兵士たちのお蔭で兵力も不足していたのである。
気を良くしたドイツが、劣等民族スラブ人を奴隷にするチャンスだと侵攻開始したのである。フィンランド戦争において、あまりにも無様な様子を示しすぎたためであった。
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