第98話 怖ろしき精鋭たち
098 怖ろしき精鋭たち
ひっそりと日本の新聞が新型戦艦の建造をおこなっているのではないかというニュース報じられたが、それは大きな余波をもって世界を駆け巡っていく。
某ウラジオストク軍港区では、新型戦艦の設計図が引き直されていた。
新型大和級戦艦の図面に、新機軸を盛り込んでより大きく早く作りこんでいく。
此方の新型戦艦は、艦隊決戦用戦艦などではなく、空母随伴および対地攻撃用の戦艦である。
もっとも重要なことは、空母に随伴する速度である。
そして、空母を守る対空装備。
さらに、敵地上基地を壊滅させる砲撃力。
超大和型戦艦(長大和級といっても差し支えない)。
基本は大和型戦艦の武装46糎3連装砲を使いながらも、船体延長(全長300m)と対空火器、新型燃焼機関を採用して、30Knを維持しながら空母に随伴して戦闘を行うというコンセプトである。
燃焼機関は、ボイラーとディーゼルエンジンの混載である。船体を延長しているため設置するスペースはあったのだ。それに、戦艦には、常に電力を供給するために別のディーゼルエンジン発電機も複数設置されていた。
そして、その超大和型の船型を使い新型航空母艦が設計されていく。
今迄の日本の空母は、巡洋艦の船型を使っていたが、彼らの考えでは小さすぎるのである。
超大型航空母艦の建造も開始される。
ウラジオストクでは、戦艦と空母の同時建造により好景気が到来しようとしていた。
同じく、仙台でも、戦艦と空母の同時建造が開始される。
満洲の日本海側港湾では、謎の鋼鉄のブロックの製造が多数確認されることになる。
彼等の艦船建造では、ブロック工法と溶接が標準である。
鋲接工法は、最も安全を要する場所に限定されている。
これだけの建造を行っても、まだ港湾には余裕があったというのである。
一体誰がこのような、港湾整備を行っていたのであろうか?
そう、神の使いである。男は謎の脅迫観念にとりつかれているのかもしれない。
そして、この艦隊も個人の資産を投じて建造していたのである。
凶器の沙汰とはまさにこのことであり、頭のおかしいこの男は、莫大な資産を投じて大艦隊を建造していたのである。
日本艦隊では数が足りない、弱い、言うことを聞かない。
だから、作り始めたのである。自前の艦隊で作戦を遂行するために。
こうして、すでにおかしい設定の大艦隊が構築されていくのだ。
一体誰が乗り組むのだろう。
帝国海軍軍人がそんなに余っているとも思われないのだが。
確かに、予備役に編入された者もいたが、誰のものかもしれない艦船に乗り組むのだろうか?
だが、公称2000万人信者(自らそう名乗っている)を誇る日月神教である。
精鋭たちが日々訓練をしているのである。
彼等は、満州やソビエト、その他の地方で孤児になった子供たちである。
世界の孤児を救うために、日月神教では、慈善事業として多くの孤児を引取って育ててきた。
その数は、数万とも数十万ともいわれている。
先の大戦や大祖国戦争、戦乱のお蔭で孤児は、掃いて捨てるほどいたのである。
それらの孤児を慈善事業として引き取って育てていく。
その教育の中に洗脳や兵士育成プログラムを組み込んでおけば、成人になる頃には、立派な兵士が出来上がるという仕組みである。
孤児収容所において厳しい訓練と教育、信仰を植えつけられる。
残念ながら、シベリアの地では、脱獄できても、生きて人界にたどり着くことは不可能である。そして、奇跡的に人界にたどり着けたとしても、そこはロシア領内であり、神教の勢力範囲である。案外、神教の村であったりするのだった。通常のロシア人達の侵入を監視しているのだった。
成績優秀な者たちは、大学に進学し、成績が振るわない者たちは、そのまま兵士になる。
美しいもの達は、潜入工作員として、各所でハニートラップとして配置されていく。
全ては、神の使い『御使い様』の為に、己の命を犠牲にしても成し遂げねばならない使命なのだ!
少なくとも彼らの中には、絶対的な価値があると思い込まされていた。
だが、明日の命も定かでない自分たちを拾って飯を与えてくれて育ててくれた人間を悪く思うことなどできるわけがない。そうしてもらえねばおそらく飢え死にしていただろう。
そう、たとえそれが、悪人であったとしても。
命を助けてくれたという恩はそこにあったのだから。
・・・・・・
どのような事情があるにせよ、乗員は確実に錬成されつつあった。
そして、航空機搭乗員も某航空学校において続々と錬成されていた。
さらに、陸上戦闘員も同様であり、必要な場合は、関東軍から抽出できる契約になっていた。
関東軍司令官になった石原莞爾大将は、『兎の穴』の一員である。
そして、熱河事変の時に大きな借りをつくったのが、運の尽きであった。
帝国陸軍において最も精鋭な部隊は、関東軍第7機甲師団である。
多数の戦車を有し、機動可能な車両を多数保有している。
史実通りならばすでに日中戦争に突入しているところだが、石原の引き締めが効いて、長城を越えることは決してなかった。
「そもそも、閣下は漁夫の利という言葉をご存じか?」
ある男から投げかけられた言葉である。この言葉は、中国では、国民党と共産党を争わせておけばよいのだ、という意味を含んでいた。
この野郎!私ほどの秀才が知らぬはずがないだろう。
だが、面と向かって言い返すには、場が悪かった。
男の両側には、何人(国籍のこと)かわからない大きな男達が立っていた。
このころ、男のそばに、若返った維新の志士はいない。
すでに、護衛を出来る兵士たちは、連隊規模で存在したので、お役御免となったのである。
黒人の大男と金髪碧眼の大男が傍に控え、秘書らしき金髪、茶髪、黒髪美人も数名立っていた。なんとも怪しからん奴!
石原は、それを見て、なんとも腹が立ったのだ。
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