第97話 小型軽量優秀エンジン

097 小型軽量優秀エンジン


栄エンジンは、ものすごい戦闘力を発揮した。

しかし、そのあまりの凄さは反動を産む。

米軍は格闘戦闘の禁止という対策に打って出る。


そして、格闘戦でなく一撃離脱戦闘を行い、大馬力で急上昇して逃げるような戦闘方法へと遷移していくことになる。


その後に、ベテラン日本軍パイロットたちがどんどんと死んでいく(ミッドウェー海戦など)。


非力な栄では、急上昇して追いつくことはできないのだった。

そして、『栄』を妄信していた軍上層部は対策を上手く打つことを出来なかったのである。


八咫烏師団航空隊では、このような結果にならないように、早々から大馬力エンジンしか開発していない。故に直径も大きなものをはじめから想定している。

多少、不格好であろうが、関係ない。


其れよりも、馬力向上によって、防御性能や武装の向上を図る方が有効な戦術であると考えられていたのである。


重武装、防弾板、自動消火装置、無線機、防弾ガラスなど様々な防御装置が搭載されていく戦闘機には、エンジンの馬力が何よりも必要なのである。


そして、このエンジンの大馬力は、艦攻や艦爆でも十分使用できるものであった。

これにより、このエンジンは、あらゆる機種でも使用可能になり、より大量生産が可能になるのである。


馬力不足の場合は、ターボを装着することにより、2500馬力まで発揮可能である。(機密指定)ディーゼル社は、非常に優秀な星形エンジンをも開発していたのである。

流石に、エンジンの神であった。


だが、残念なことにこのエンジンは、未だ人々に知られることは無い。

師団航空部隊の航空機にのみ提供されている。


後にゼロ戦に対する審査の時には、栄エンジンが選定されることになるのであった。

そもそも、提出されていないのだが。

1936年(照和11年)


この年、血なまぐさい226事件が発生する年である。

帝都不祥事件と呼ばれる。

陸軍の青年将校たちが、クーデーターを興すのである。

上手くクーデーターを引き起こすが、天皇により失敗に追い込まれるのである。

皇道派に影響された彼らだったが、この世界の皇道派はすでにほぼ全滅していたのである。


はすでに柳条湖事件の際、爆殺されていた。

永田鉄山暗殺事件を失敗した、相沢何某もすでに死亡していた。


因みに現在の総理大臣は、犬養毅ではなく、原敬である。

さらに言うと、515事件も不発に終わり、その引き金になる血盟団事件も完全に封殺され、関係者の多くが不帰の人となり果てている。


つまり、この照和の時代には、226事件が発生することなどありはしなかった。

特高警察や憲兵隊が、完全に情報を掌握しているからである。


尤も恐れることが有るとすれば、特高警察や憲兵に入り込んでいる人々である。

特高警察は特にひどかった。

それはある種の宗教に強く影響された人々が多くいたことである。

仕事は非常にまじめに取り組むのだが、彼らの関係者(信者)に関しては、完全にスルーすること。

そして、内部の情報については、全てが別組織に漏洩していた。

由々しき事態が発生していたのである。


憲兵は陸軍の管轄であったが、ここでもかなりの侵食が発生していた。

彼等は、所謂信者ではないが、あらゆる誘惑により、堕落させられて仲間になってしまっていた。


何しろ、バックには巨大な金融集団が控えていた。

中には、それに気づいて立ち上がろうとしたものもいた。


だが、彼等の背後には、経済力以外にも純粋な暴力を持つ集団も存在した。

PMC(民間軍事会社)八咫烏師団。もはやこの集団を取り締まろうとする勢力は存在しない。


彼等と戦えるのは、もはや軍隊以外に存在しない。

何故なら、彼らは軍隊だからだ。

その他にも、非合法活動を行う部隊も存在した。

ヤクザまがいの組織のふりをした別の部隊。


〇〇組や〇〇興業などの名前関したそれに見せかけられた組織。

しかし、実体は、非合法活動をヤクザの仕業に見せかけて行う、PMCの組織の一部である。


立ち上がった者たちも、彼らに消されていった。


本当に改革すべきところは実は、こんなところにあったのかもしれない。

日本は、底辺の部分から明らかに侵食されていた。

だが、誰もそんなことを気にはしていなかった。

というか、気づいていなかったのである。


・・・・・・・・・・


こうして平和な一年が過ぎ去ろうとしていたが、日本国内では早くも戦艦『大和』の建造が開始される。秘密結社『兎の穴』の暗躍により、Xデイに向けての活動である。

XデイのX計画では、戦艦『大和』も『武蔵』も同時に出撃し、敵基地に向けて艦砲射撃を行わねばならないのである。出発しました、できましたでは遅いのである。

一緒に出発しなくてはならないのである。そのために、建造の前倒しが行なわれていたのである。


そして、その事と同時に、新聞でそのことが少し報道されていたのである。


〇〇新聞に載った記事である。

帝国海軍、巨大戦艦建造の噂?

呉海軍工廠において、新型戦艦が起工されるらしい、この戦艦は、海軍軍縮条約失効に伴う、建艦計画であるようだ。

相当大きなものであることは確実であり、わが社はその情報をある筋からキャッチした。

わが社は、海軍広報課に確認したが、明確な返答は得られなかった。


そして、地方新聞にも同じような記事が載った。

長崎新報という新聞に、三菱佐世保において、新型戦艦建造の噂。

グラバー園から見下ろすことが可能な三菱佐世保造船所が覆いにより隠された。

その後、グラバー園は見物禁止措置となり、一般人の立ち入りは禁止された。と


実に、2隻もの新型戦艦の建造が開始されたのである。


米国情報部もこの情報を早くもキャッチしたのである。

米国政府は、この情報を重大な問題であると認識し、直ちにオレンジ計画に伴い、するのである。


日米双方とも艦隊決戦に向けた建艦が行なわれていくのである。

この照和の時代には、艦隊決戦は行われるのか、鍔ぜりあいはすでに開始されたのである。


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