第88話 大慶び!油田発見される。

088 大慶び!油田発見される。


1932年(照和7年)満州国が建国される。

関東軍が、満州全域を制圧、邦人保護と中国から切り離し工作が行われ、前清朝の皇帝溥儀が満州国民を納める首相に就任した形となった。

当時の満州は、中国領土として確固としていたわけではない。

満洲人と漢人は違う。

『清』という国は、満州族が漢民族を支配して作った国であり、その後この満州では確固とした支配者が存在していたわけではなかったのである。簡単に言うと、満州族が中華に侵入したことにより真空地帯になっていたのだ。


関東軍は、東北軍閥の主力を長城で押し込めていた。

張学良の東北軍主力は北京にいた。


各国は、国家として承認しなかったが、自国の権益が守られるならば、文句を言わない形をとった。満州事変での策略が功を奏した形になった。


関東軍は、北京の東北軍主力を牽制するために、新型戦車を注文することになる。

新型戦車(90きゅーまる式戦車と呼称)を購入する代わりに、決して中華本土に攻め込まないことを再度念押しされる。それと、満州の一部区域の採掘権を認めさせられる。


黒竜江省の某所

そこには、八咫烏師団シベリア連隊が派遣されていた。

そして、石油採掘業者が同行している。

彼等は、『白兎石油』の社員である。

白兎石油は、樺太で石油の採掘精製などを行ってきた、老舗の石油業者である。


さらに、例の男、某大佐も存在していた。

未だに、軍務につくこともなく、外交官付き武官のままである。

よって仕事はほぼないに等しい。

暇つぶしにきたのであろうか。彼の動きを牽制できる上官はいない。


「さて、いよいよこれの出番がやってきたわけだ」

その手には、木の枝が握られている。

それは、アイテムボックス内に長期にわたって大切に保管されていた神木の枝である。(出番がなかったのである)

「さあ石油を示してくれ」

木の枝が倒れる。

「向こうだ」

あまりの出来事に、白兎石油の関係者も呆然だが、男は、神の使徒であるため、声を挙げることはできない。反対の声を挙げればシベリア連隊の兵士に射殺されるかもしれない。


「さあ石油を示してくれ」

今度は木の枝が突き刺さる。

いかにも、おかしな現象であった。

倒れるはずの枝は見事に地中にめり込んだのである。


「ここだ、ここを掘るのだ。工兵たちは、すぐさま防御陣地を構築せよ」

「は!」ここには、狂信者しかいない。


所謂、史実では皆が大変喜んだので『大慶油田』と名付けられた油田がいとも簡単、雑に発見された瞬間だった。


後にこの男は同じ方法で、遼河油田(現在の遼寧省)も同じ方法で発見する。

山東省でさらに油田を発見するために準備をしていたが、山東省は、日本の勢力の外だった。


この手法を彼は『神の見えざる手』と呼んだが、あくまでもダウジングであろう。


だが、発見の手法はさておいて石油は本当に発見される。

白兎石油はヤッタのである。

これで、石油禁輸問題は大きく後退することになる。

だが、新ロシア領内でも、実は油田は発見されていたのである。

あくまでも、関東軍に見せるために行なっていたのである。


この地は、非常に重要な場所であり、中華本国に行く必要などない。

ここを守れというデモンストレーションなのであった。


所謂、重質油が産出されるのだが、そこには、天才テスラ兄弟が控えていた。

我が弟で、ニコラの兄玉兎(元デン)は、重質油を改質する方法を、開発する。


高温、高圧化で水素を転嫁することでこれを可能せしめたのである。

この成功により、軽質油、高品質オイル問題もあっという間に解決してのけたのだ。

しかし、この事実は、帝国軍内部に知られることはなかった。


軽質油、オイルは非常に希少な物という視点は維持されることになった。

高く売りつけるために必要な事であったのである。


こうして、残ったアスファルトを使用して、道路会社が設立される。

『白兎道路』である。この会社は、満州各地でアスファルト道路を作り始める。


独占企業である。関東軍はそれを認めざるを得なかったし、戦車輸送用トラックには、道路が必要でもあった。因みに戦車は、列車により輸送が可能である。


満洲鉄道は、広軌を採用している。その列車に乗せることが可能なサイズで設計されている。

逆に言うと、日本本土は、狭軌を採用しているので、輸送できないということになるのだが。


関東軍では、戦車を購入したおかげで、石油を手に入れた。

だが、次の目的地、中華本土は絶対に攻撃してはならないと、呪詛を浴びたので進むことはできなかった。

そうなると、モンゴルに行くしか手はなかった。

そのような攻略計画が進んでいるころ、やはりあの男が現れる。

残念ながら、関東軍内部には、複数のスパイが入り込んでいるのであった。

日月神教1000万信者の力、どこにでも入り込んでいるのだ。


「そのような、つまらんことをしてはいけない」今や、関東軍司令部でも、その海軍士官は有名で、自分の庭のように勝手に歩き回っていた。

ごく少数の会議であったにもかかわらず、男は入ってきた。


このころのモンゴルは、赤化していない。

隣の新ロシアがソビエトになっていなかったためである。

「我々は5族共和を捨て去ったが、日満露蒙のブロック経済を形成せねば、大国に対抗できないこともわからないのですか!」


5族共和は、石原が提唱した理念だったが、却下された。

しかし、ブロック経済は問題ないらしい。そもそも、欧米のブロック経済に対応して、満州事変を興したのが彼等なのだ。


満洲では、油田が発見されて好景気に向かいつつある。

利益は一社が独占しているが、波及効果は有る。

油田ができれば、製油施設、輸送施設などの投資も必要とされる。

国家予算規模の支出が必要なはずだったが、国家は介入していない、一社が投資を行っている。

異常な光景であった。


数十億円規模の投資を一社で苦も無く投資している。

商売に利するために、多くの者が日月神教に入信することになる。

入信すれば、お布施は必要だが、優先して仕事を廻してもらえるのだ。


裏切らない約束の手形として、自分達の子供が、神教青少年部に入信させられ、寄宿学校で教育を受けることになる。この宗教の恐ろしいところは、そこである。


教育を受けた子供たちは立派な信者(戦士)となって親の元に帰ることは無いのだった。




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