第71話 神の子
071 神の子
1920年(太正9年)
私は、すでに結婚し、妻(正妻:ロシア人)は懐妊した。
ロシア伯爵になった私は、軍を辞めて貴族として、南海の孤島にでも亡命しようかとも考えていた。
だが、何回か行動を興そうとすると、自動車が落雷に会い破壊されるなどの不幸な事故が発生した。(多発したともいう)
この伯爵位は、ただの黄色人種と結婚させたのでは、恰好がつかないのでそれなりに、『命の恩人』とか『反共産主義の英雄』などと言い繕うための方便の爵位であって、本物の貴族からは、下に見られていたりする。
私も、彼女の父も反対だったが、この私が、脅迫に屈して結婚する羽目になってしまった。
私は、人類最強の一角であると固く信じていたが、彼女の使う呪いのナイフは只者ではなく、やむなく降ったのである。
何故、このような最凶最悪の呪物が存在するのかはわからないし、なぜ彼女がもっているのかもわからない。おそらく機関が私を暗殺するために用意したに違いない。
只の女にやられて情けない?
そうではない、この呪物は、人の意思に反応して、人を動かすのだ。
このナイフを持った彼女の動きこそ、ワイヤーアクション顔負けの動きをするのだ。
ナイフを持った女は、空中を飛翔してやってくるのだ、それが只の女の動きであるはずがない。
私は、このナイフの反応をパラケルススシステム(別名サイコ〇レーム)と名付けた。
恐らく、これは、機関が皇帝家に献上したのもので間違いないだろう。
一方、私は、日本本土でも結婚した。
そして、妻(本妻:日本人っぽい?)も懐妊した。
母が言った通り、キチンとそのシステムを備えているようだ。
しかし、私は知っている。というか確信を抱いた。
私は、きっと父の子ではないということを。
そして、弟の妊娠(テスラの兄)でもそのようなことは致されなかったということを。
この事実が何を意味しているか、君たちには、わかるだろうか?
そう、これが処女懐胎である。そして処女懐胎で生まれた人間が存在する。歴史上別に存在する。
その人間が生まれるのを天使が教えに来たという。
つまり、イエス・キリストこそがそれだと言われている。
私も弟玉兎(テスラの兄ダン)もそのような存在、つまり神の子であるいうことだ。
私は、神の使徒ではなく神の子である。
しかし、決してそのことは明らかにしてはならない。
『機関』の攻撃がさらに凄絶になるからである。
この子(産まれてくる子)に関しては正統な父は私である。
ところで、話はかわるのだが、港湾整備が思うに任せない。
進んでいないということだ。
トラックの普及は、第一次世界大戦後である。
しかし、トラックだけでは勿論土木工事は進まない。
トラックがない場合は、猫車をつかう訳で、もっと進まない。
トラックについては、ディーゼルエンジン社が生産している。
ようやく、エンジンの小型が進みトラックぐらいならば問題ない大きさになったということである。
しかし、その他の重機が不足している。というかほぼない。
そこで、天才テスラ氏にお願いしてみるが、彼は電気系だった。
すると、そこに小さな(すでに年齢よりもかなり大きい)弟が現れた。
彼は、ニコラ以上の天才で、神の子である。
私の意図する、ユンボを見事、実現させるのであった。
流石は『神の子』である。油圧装置をも見事に開発してのけたのである。
こうして、『玉兎重機』が組織され、手作りだが生産を開始する。
完成後順次各国の現場に出荷されていくことになる。
だが、このユンボは、すぐに大ヒット商品となる。
ロシア内戦の縦深陣地の構築で物凄い力を発揮することになった。
永久凍土のシベリアでは、なかなかスコップも土に入らないが、ユンボは違う。
人間の努力を嘲笑うかのように、サクサクと掘り進めていくのであった。
新ロシア国内に、ロシア資本の大工場が建設された。
皇帝家が金をだした工場である。
伯爵家は、そこでできたユンボをタダでもらうことが可能になった。
それを、帝国軍に売りつけるだけで金儲けになる。
何故、帝国がユンボを買うのか?
陸軍が必要としていた。
来るべき戦争には、要塞が必要である。
史実のサイパン、硫黄島、沖縄では日本軍は手で掘っていたことであろう。
そもそも、『精神一到何事か成らざらん』の精神である。
竹やり千本あればと豪語する馬鹿者が出世する世界である。
たしかに、精神力は必要だろうが、それは最後の瞬間に生死を分けるレベルであって、端から無理を推し進めることとは全く違うことに気づいていない。
だが、この世界では、乃木一派が、良き理解者として存在している。
彼等をうまく巻き込んで機械化を押し進めていくいい機会でもあった。
勿論、金儲けのチャンスでもあったのだが。
特に、戦地の真っただ中になる、ニューギニア島では、秘密の洞窟などは最も必要なものであった。ユンボ、トラック、ブルドーザーなどが送られていく。
そして、人々は、その威力に驚嘆した。
一度体験すれば、馬鹿みたいにツルハシで掘ることができなくなる。
勿論、これは簡易飛行場造成の訓練でもあるのだ。
まだ、彼らは航空機の有用性を理解できていない。
そうこうしているうちに、一人目の子供が生まれた。
妊娠してから5か月の早業だった。
これは早産?
日本人っぽい嫁の早業である。
元気な様子で何よりだ。
このことは、ロシア人嫁には、内緒だ。
ばれるとおそらく殺されるだろう。
彼女は『機関』に就職すべき人間に違いない。
私を抹殺できるのは、世界広しと言えど、彼女だけだろう。
因みに日本人っぽい嫁は、やっと日本語を人間風に話せるようになっているので問題ない。
とても美しい大和なでしこ型ロボット?だ。いや、サイボーグか?いや、!・・・・・。
世界は混迷に満ちていくのであった。
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