第63話 人々の生活

063 人々の生活


効果のほどは分からないが、本人は大層感銘を受けて、気分がいいらしい。

プラセボ効果なのかもしれない。


だが、女性たちには大変な喜び様であり、皆がまとわりついてくる。

この家の女性が大概ヤバい性格なのかもしれない。


中でも、三女は、私の旦那様はこの方です。と宣う始末であった。

まあ、この家には、金があるので縁戚になった暁には、一人残らず不審死して、財産を相続しそうな気がするのだが、どうなのだろう。


あるいは、新ロシア皇国でも名乗り、広大な版図を打ち立ててもよいかもしれない。


まあ、そのためにも、色々と準備がいる。

まずは、赤軍と戦える体制づくりである。


第一次世界大戦の戦訓とは、新兵器の登場と総力戦である。

結局日清、日露戦争とも局地の限定戦争なのだ。


本土を攻撃して生産力を完全破壊することなど想定していない。

新兵器にしても、航空機の発達は、世界を揺るがすだろう。

今は、手ずから爆弾を落とす程度の性能だが、それが想像もできないほど飛び、巨大な爆弾を落とすようになるのだ。

日本帝国はそのことを理解しただろうか。


日本では、手作りで戦闘機や戦車を作りだすだろうが、米国はライン生産でどんどん生産されるのだ。


日本には、工業的な基盤(家内制手工業?のため昔社会科で習った)があまりないのが現実だ。

そこで、曲がりなりにも、西欧の先進国?だったロシアの力を利用してやらねばなるまい。


まずは、ウラジオストク軍港の整備である。

軍港を整備しても、赤軍を倒すことはできないが、私には必要だった。

それから、大砲、戦車、トラックの大量生産ラインなどが必要になるだろう。

それらの金は、ロシア皇帝がだしてくれるだろう。いや、出す一択だ。


ウラジオストクから日本海にかけた沿海州に、それらの製造基地を整備する必要が有るだろう。

ロシア帝国は、バイカル湖周辺で、防御陣地を設定し、冬を利用して徹底的に防御戦闘し、時間を稼ぐ。


そのために、ロシア新兵を教育するための教導部隊が必要だ。

幸いにして、高性能な機関銃だけは用意できる。

教導部隊は、当然、八咫烏連隊の精鋭たちになるだろう。高給が必要だが、仕方あるまい。

教導部隊には、貴族の特権を与えねばならない。

白衛軍は貴族主義者が多いので、命令を聞かない場合が考えられるので、新貴族として高い階級を用意させる必要があるな。


革命から逃れてくる一般市民の中から赤軍のスパイを排除しつつ、新兵となしていく。

なんにしても、スターリンがボロをだすのはすぐそこだ。

自分が権力を握り、レーニンが死ねばもう誰も止めることはできない。

粛清の嵐が吹き荒れることだろう。そうすれば十分粘ることができるに違いない。


こちらは、遅延戦術でそこまで粘らねばならないだけだ。

大いに督戦して戦わせてやろうではないか。同じロシア人どうしなのだからなんら問題ないはずだ。


トラックは、ディーゼル氏の活躍もあり、トラック用エンジンの開発が完了していたので、それを量産し、載せるだけである。

生まれ変わったディーゼル氏は、勤勉で研究熱心、そして深く神を信仰している。

その神は以前の神からすり替えられてはいるのだが。彼はそれを気にしていないようだ。


ディーゼル氏は、それと同時にターボファンの研究も進め、ターボディーゼルにより、さらに高性能なエンジンへと進化させた。

高温になる部分には、ニッケル合金が良いことがわかり、それを使うことで熱問題を解決させたのである。


また、大型エンジンも開発しており、それは輸送船のエンジンに採用されることになる。

ガソリンエンジンでは不可能な大型化がディーゼルエンジンでは可能だった。

ピストンの直径が大きく長くなり燃費を効率化させる。


其れとは別に、冷蔵機を開発した。彼はもともと冷蔵の研究をしていたのである。

日本ではすぐに食物が腐るので、冷蔵したいな!とお願いしてみたらできたのである。


こうして、フリーズドライ技術への扉が開かれた。


一方の天才ニコラは、通信会社を立ち上げ、ラジオを開発製造販売している。

二足のわらじで、東北帝国大学教授も務めている。


ついでに述べておくと、生き返ったドイツ帝国空軍のエースは、知り合いを一切合切引き連れて、満州の土地にやってきた。

やはり、敵国日本を信じるきることができない者たちがいたらしい。

戦争が終わり、大量の戦闘機が行き場を失っていたが、それらを買い付け、飛行学校を設立した。


サーカスをして稼ぐと言い出した人間もいたらしいが、我が神教青年奉仕団に飛行技術を伝授してもらうことの方が重要であった。

始めは、不満もかなり潜在していたが、国連で、ドイツの巨額賠償金が決定され、国内でスーパーインフレが開始される頃には、こちらに来てよかったと皆が感謝するようになったのである。


最もよかったことは、マンフレート氏が、自分の飛行機を整備していた技師の家族まで連れてきたことである。日本では、下に見られがちな技術部員だが、本物のマイスターの国では、最も信頼する整備士に、自分の機の整備を任せるのだが、その文化が我が青年部に受け継がれていくことになったからである。


少なくともここでは、日々の生活が十全に送れるほどの給与と物資があった。

英仏に締め上げられるドイツとは雲泥の差があったろう。


このようにして、儲けた金で技術向上を図り、次の分野を切り開いていくのであった。

未来は明るく輝いている!はずである。


そこまで約束したわけではないとその男はきっというに違いないが。




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