第59話 聖堂騎士

059 聖堂騎士


一旦、元皇帝の死体をアイテムボックスに入れて、イパチェフ館の中庭にでる。

恐らく、敵機関もまた妨害工作にでるであろうから、邪魔はいない方が良いし、狭い部屋よりも良い。

人々が死に絶えたこの屋敷でこれかどのような怪人が生まれるのであろうか。


すでに、何かの化け物が出てくる前提で話が進んでいる。

これは、IF戦記であって、仮〇ライダーなのではないのだが。

(でも敵は、ドル〇ーだったのだ。)


複数の銃弾を浴びたニコライ2世は確実に死亡していた。

そのような事は、今までさんざんに修羅場を渡ってきた私には手に取るようにわかる。

死者を蘇られせてくれなどと、無理難題をいいつかったものである。


そして、例によって薬包紙を開いて、白い粉を振りかけていく。

死体がぐつぐつと煮えたぎり始める。

やはり『早く人間になりたい系』の生き物が生まれそうだった。


死んで宙を睨んでいた目玉がギョロリと動き、私を認識した。

怖ろしく憎んでいるというような視線を向けられる。


まさにアンデッドは生ある者を憎む。

「ヴオオオオオオオオオ~~~!」

一体、何の雄たけびなのだろうか。

そいつは巨体に成長し、立ち上がったのだ。


「殺す殺せ!貴様!我!」意味不明なことをロシア語で呟いている。

これは初めてのパターンだ。

今までは、の化け物だったから言葉など話はしなかったが、今回は敵も本気になったのか、言語を有している化け物を投入してきたようだ。


「許さ~~~~~ン」血走った眼玉が、飛び出さんばかりに、興奮した大男。

ぼさぼさの蓬髪は、いかにもむさくるしい。

そして、乱杭歯で叫びをあげる。


真っ黒いローブのようなものを纏った、黒いオーラを漂わせる闇の巨人が現れた。


突如、巨人が拳を握って突進してくる。

豪快な拳打が、衝撃を巻き起こしながら振るわれる。


余裕をもって『金剛不壊』で受けたが、私が弾き飛ばされる。

そして、壁を砕くようにぶつかり、石片をまき散らす。

想像を絶する破壊力。


「神の裁きを汝に与えん!」闇の巨人が宣言する。

「それはこっちの科白だ!」神の使徒が応戦する。


バンバンと拳同志が撃ち合わされ、衝撃波を産む。

大男は、猛烈な拳打と蹴りを加えてくる。肉弾戦が得意なようだ。

此方も、対抗するが明らかにパワー負けしている。

今までにこのようなおかしなことは発生したことが無い。

人間で私を押し切れるような存在は今までいたことが無かった。


空気を纏う必殺の拳打が私を襲う。

間一髪で躱しながら、その腕に絡みついて、体を入れて、その腕を捩じる。

普通の人間ならこれで腕を脱臼あるいは、毟り取れるのだが、巨人の強靱な筋肉がそれを跳ね返した。


「化け物め」

「ヴオオオオオオオ~~~~!」

まるで知性を感じないが、腕力はものすごい値であろう。

高速のパンチをまたも躱して、超接近して右手を相手の心臓に置く。

「発剄、神滅掌!」

掌から猛烈な神力が放射され、相手の心臓を吹き飛ばす。

背中に穴が開いて、血と肉がジェット噴射のように飛び散り、まき散らされる。


「ヴヴオオオオオオオ~~~~!!」

化け物は、さらに怒り、叫んで攻撃を加えてくる。

これで死なんとは貴様は化け物か!


その時、私は相手の正体を悟った。

『拳銃で心臓を撃たれたのに、死ななかった』誰が流したのか、そんな噂があった人間、不死身なのでは?そのような話を聞いたことがあったのだ。

そう、その噂の人物とは、怪僧ラスプーチン!


「貴様は、ラスプーチンか!」


「ヴオオオオオオオ!」肯定しているのか、否定しているのかわからないが、大男は叫んだ。

敵機関もついに本気を出してきやがった!


まさしくロシア正教会のに違いなかった。


、貴様を滅ぼしてくれる!」私が絶叫した。


ラスプーチンは、またしても雄たけびを上げる。

近くに植えてあった木を引き抜いた。


一抱えもある木を引き抜きやがった。

それを振り回す。

ガン!と私が、殴りつけられてまたしても壁にぶつかり転がる。


「貴様~~~!許さんぞお!」愛刀をアイテムボックスから出現させる。

両手両足を切り飛ばして動きを止めてやる!


全身が揺らぎ、動き出す。

消えるような動きでラスプーチンに接近しようとしたとき、奴の眼が青く光った。

「あ!」

動けなかった。

超能力!だった。

またしても、木の幹で殴り飛ばされる。


あまりのことに血管がぶちきれるほどに血が上る。

私の全身から黄金の闘気が迸る。怒りが沸騰した瞬間だった。


高速で木の幹が振り回されている。

黄金の掌打が幹とぶち当たり、幹が爆発した。


ラスプーチンの眼がまたしても青く光ったが、すでに私の目は開いていなかったのだった。


第三の眼が貴様を捕らえておるわ!

「玄兎皇拳奥義!滅十絶字拳!」


輝く拳がラスプーチンの右胸を貫いた。

そしてその手は、彼の心臓を掴みだしていた。


「グオオオオオオオオ~~~~」

狼の遠吠えのような悲鳴を発して倒れるラスプーチン。

心臓を撃たれても死ななかったのは、心臓が右寄りに存在しているからだと、前の技を放った瞬間にで察していた。


偶に発現する特異体質だったのだろう。


こうして、聖堂騎士団の手の者は倒されたのである。


怪僧ラスプーチンの形がドロドロと溶けていく。

そうして、再び人型を取ろうとしたときには、若き皇帝ニコライ2世の姿になろうとしていた。


手の中の心臓がぴちぴちとはねた。

吐き出すまでもなく、すでにわが手の上に、存在している。

どうせ、皇帝などというものは、嘘つきで傲慢だから、さっさとそれをアイテムボックスにしまう。

逆らえば、握り潰してやる。


激闘の後地は、激しく破壊されていたが、誰も気にすることもなかった。

皆死んでいたからだ。


ロシアの夜空には、美しい星々がさめざめと輝いていた。

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