第56話 シベリア出兵

056 シベリア出兵


1917年ロシア帝国崩壊。

その前半には、第一次世界大戦から離脱していたが、国内の不満が爆発、共産主義政権が成立する。

それに伴い、王家の人間は、軟禁状態に置かれる。


ロシア帝国は、成立以来300年間にわたり広大な土地を統治し、庶民から搾取してきた。

その富は、世界一であると世界の諸国では言われていた。


そして、史実通りなら、彼らは抹殺されて、その蓄えた富は所在不明となるのである。


「そのようなことは決して許してはならん!」

ここに一人大志を抱いた若者がいた。


王家が抹殺されることを憂えているのでは勿論ない。

そのこそが、使われることをのに、暗闇にけしてはならないと、決意を表明したに過ぎない。


簡単に言うと、ロマノフ家の資産を奪取する。といっているのだ。

そこには、正義も道理もない。

そもそも彼には、そのような感情は非常に薄いのだ。


儲け話がそこにあるならば、乗っかる。

あわよくば、全部搔っ攫う。そのような人間であった。


そうして、彼は、海軍に休暇届け(胃腸の病)を出し、ロシアの地へと潜入を開始する。

このころの海軍では特段の仕事はない。国際連盟で、ドイツ植民地の領有問題が残っていたが、それは外務省の仕事である。

史実と違うのは、なぜかニューギニア島に陸軍特殊部隊が駐屯していることくらいだった。

英豪新の英国連邦は、難色を示している。

米国もそれに反対している。(米国は国際連盟に加入していないにも関わらず文句だけは言っているのだ)


だが、日本は決して撤退しようとしなかった。

外務省もここは引き際と説得しようとしたが、元老伊藤は決して、手放してはならんと激怒しているらしい。


それはそうだろう、米豪分断を狙うなら、このニューギニア島は大変重要な場所であることはいうを待たない。しかし、一体誰が、米国と戦うというのだろう。海軍の仮想敵は米国であるはずであったが、そのことに気づく者がいなかったのである。


彼らは、予算を要求するために、仮想敵を設定したが、本当に戦うつもりなど毛頭なかった。

だが、残念なことに、仮想敵の米国は、日本をアジア進出を邪魔する敵であると認定をするのだ。


日本は、中国(主に満州)でも派手に振舞い過ぎたのである。

こうして、急速に対立の構図は出来ていく。

日英同盟は、米国の反日の動きでもうすぐ解盟されることになる。


1918年

日本は、シベリア出兵に参加するため、ウラジオストクに一番目に到着した。

その後各国の部隊が、チェコ軍団を救出するため、赤軍との闘いを行うため集まってくるのだ。


だが、日本は、はじめ難色を示して、派兵を了承しなかった。

ニューギニア島委任統治問題で、交渉が難航しており、うまくいっていなかったためである。

しかし、世界初の共産主義政権樹立が目前に迫り、各国は何としても、それを止める必要があり、チェコ軍団に一番近い、西側諸国?として仕方なく日本に依頼せざるを得なかった。

兵を輸送するにも、船のため、時間がかかるためである。

また、ロシア西方は当然に共産主義政権が握っており、西欧各国の軍隊は通れず、また力もなかった。


力のある米国からは、船での輸送とならざるを得ない。


日本は出兵する条件に、ニューギニア島委任統治権を絡ませて認めされることに成功した。

日本のがうまくいくなどとは、に近いのかもしれない。


その当時から今に至るまで日本には外交センスというものがまるでないことは、今も変わらないことは、皆さんも承知しているであろう。


この外交は、元老伊藤が努力した成果であった。

やはり、若いころから外国に渡り、諸外国の政治や技術を学んできた苦労がここで生きたのである。


こうして、ウラジオストクに日本軍2万が到着し、さっそく南下政策を開始する。

邦人保護のため、やむなく朝鮮半島を目指し部隊を進めることになるのである。

約束では、7000名のはずであったが、2万名もの兵を送ったのは、邦人保護のためであり、ウラジオストクには、7000名が残り、各国の軍を待つことになる。


日本の軍人の中には、この機にロシア領土を切り取ろうとする不届きものが複数発生したが、シベリアの地理、風土に疎い日本軍が占領を維持できるはずがない。

「そんな馬鹿なことに金と命を浪費する馬鹿者は誰だ」元老の直言で皆が黙らざるを得なかった。


陸軍の中には、日露戦争で戦った将官も残っていて、このようなことを画策したのだが、多くの者は、この言は至極正当であると認めた。

それほど、シベリアの冬は厳しい。

それよりは、朝鮮半島の領土化、樺太の防衛に力を割いた方が有用であることもまた事実であった。


樺太の油田では、日本では出ない量の石油が採掘されていた。

まさに、虎の子の油田なのだった。


だが、そのような事態が発生する以前に、民間軍事会社『八咫烏連隊』(規模が大きくなり部隊から連隊に昇格した)のオートバイ部隊がウラジオストクに上陸していたこと知る者は少ない。

彼らは、オムスクに向けてシベリア鉄道に乗っていった。


彼等が目指すのは、エカテリンブルグである。

そこに目指す財宝がいるからだった。





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