第14話 維新の鬼
014 維新の鬼
蹲った背中から揺らめく神気を見ることができる。
「ウウオオ~」痛むのか叫び声を挙げる山口。
・・・・・・
熱いぞ!胃が焼ける!
なんだこれは!薬が体に吸収されていくのが感じとれる。
こんなに、浸透していくのがわかる薬があるのか!なんだこれは!
痛い!痛い!手足の筋肉が激しく痛む!
そうこうする内に、頭の中でも激痛が走り始める!
体の古い部分が破壊されて、新しく作り変えられていく!
その古い部分の破壊によって痛みが発生するのであろう。
脳内にもかなり駄目な部分があったのか!ウウグ!頭の中に針で何回も刺されるような痛みが走る。
そして、眼が~!
耳が~!
歯が~!次々と激痛が発生していく。
恐るべき薬品だった。
老化して駄目になった部分を悉く作り変えていく感じを受ける、体全体が軋みを挙げている。
しかし、俺の体は、一体どこまで悪化していたんだ!
その時には、すでに意識が途絶していた。
あまりの痛みに耐えきれなかったのだった。
・・・・・・・・・
明らかに、人体に何かの化学反応が激しく起こっているようだ。全身に痙攣のような動きが見える。
しかも、ヘドロのような臭気も漂ってくる。
これは、死んだな!山口一(はじめ)!
腐ってやがる!
「あなた、しっかり、うっ!」
その臭気に妻が顔をそむける。
だが、その臭気も次第に消えていく。
神気が打ち消していく。
消臭効果を確認!
しかしな、そもそも飲まねば腐らないから無意味だな。
変態を終えた山口が半身を起こした。
何と!山口は腐っていなかったぞ!
意識を失っていた山口が突如ガバリと立ち上がったのである。
強靱な筋肉で引き締まった肉体から湯気が立ち昇っている。
薬品の効果を観察するために、上半身裸で飲んでもらったのだ。
それは、若き頃の山口に似ているが、少し違うらしい。
とは奥様談。
鋭い視線はそのままだが、体から発する闘気は鬼神のごとく、全身からゆらゆらと立ち昇っている。
この鬼神の如き勢いで維新を切り裂いて来たのであろう。
まさに、鬼がそこにいた。
30歳は若返った顔は、もともと男前であったが、今は凄みをました男前になっていた。
「お前、大変なものを飲ませてくれたな!」
声すら凄みを増し、声量が増えていた。ひょっとして怒っているの?
「いえいえ、若返りできて何よりです」さも当然という風に答える私。
「ああ、若いやんちゃなころを思い出したような気がする」
「いや、御見それしました」
「後、30年現役でも大丈夫だろう」それくらい若返りの実感が有るのだろうか。
「おめでとうございます」
髪の毛も黒くなり、増えている。
こうして、人体実験は成功を収めたのである。
しかし、あの悪臭は一体何だったのだろう。
体の悪い部分が再生されたのだろうか。
恐らくそんなところか。
だが、実はそればかりではない。
彼は、神の薬で浄化されていたのである。
身体の再生は勿論だが、悪臭の一因は、そのような悪業が浄化されて噴出した結果でもあったのである。六根清浄の身となったということである。
「それにしても、とんでもない痛みだった」
身体再生の痛みは想像以上に伴うようだ。(想像もしていなかったが)
そんな予備情報はなかったので良い実験結果だった。
死んだ人間に使ったらどうなるのだろう?
私は、次の実験に思いを馳せるのであった。
ひょっとしたら、アンデッドを作ってしまうかも。
作ってしまうかも。
作ってしまうかも。
作ってしまうかも。
作る気、満々の赤子がそこにいたのだが、人類の敵を作り出してどうするつもりなのだろうか。
しかし、この場にいる誰もが、このような悪魔的な実験を夢想する存在がこの場にいることに気づきもしなかった。
その後、山口は、一身上の都合により警視庁を退職、仙台市へと家族ともども引っ越ししてしまった。
因みに若作りになった
特に妻には。
そして、私といえば、山口家では、悪魔の魔法使いと噂されるようになっていたと言う。
『僕は悪い悪魔じゃないよ!良い悪魔なんだよ!』心のなかでそう念じてみる。
嘘をつけ!とどこかから怒鳴り声が聞こえる。
しかし、空耳に違いない。私は、神の使徒!誰もが恐れ敬う存在にして至高の存在なのだから。
・・・・・・・・・・・
株式会社『飛兎龍文』は母のお蔭で毎月、黒字を達成し、経営は順調だ。
今、山口の家族が隣の家に引っ越してきた。
家族で働ける者は、家の会社で働いてもらうことにした。
山口は、私と一緒に、山に向かっている。
敵のエージェントが私を狙ってくるために仕方がない。
因みに山口は腰には、剣、背中には小銃を提げている。
銃刀法違反?
いやいや、危険なのでもっていくしかないのです。
銃は確か規制がないはずだった。
刀は、山に入ってからしか出していないので問題ない。
「それにしても変わった木だな」
山口の感想だった。
「大丈夫、ちゃんと育っているので」
「あの缶はなんだ」
「ゴムの樹液を集めている」
「へえ~ん、そうなのか」
「そうなのだ」
パラゴムの木はすくすくと育ち、もう樹液が採集できるようになった。
育てた甲斐があったというものだ。
使用人も雇い採集を毎日行っている。
これが、天然ゴムである。
「あれも、ゴムの木なのかい?」
「あれは、さとうかえでさん」
「佐藤かえで?」
「樹液を煮詰めると甘味になる」
「なるほど、貴殿はよほど樹液が好きなんだな、前世は、兜虫だったのかもしれんな」
「虫じゃね~」
そう虫ではない。
半人半龍の魔神として世界の人々から恐れ敬われる存在だった。
(都合により、そのような設定になっています、気にしなくて問題ありません)
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