第6話

部屋にこもった私はカギをかけてお母さま防止。


もう嫌だなあ・・・


「ティアラ」


外から私を呼ぶ声。


カギをかけているので、入れるわけもない。


だまっていたら、どんどんっ、と手でたたいているとは思えない音がする。


しばらくして、やっと収まった。


お母さまは話し出す。


あきらめ気味に。


「いい?・・・あなたなんかが殿下に取り入ろうとするなんてゆるしませんわ!」


・・・はいぃ?


「あなたなんか、生まれてこなければよかったのよ!!」


・・・顔見てなくて大正解。


「あなたには、比べ物にならないくらい美しくて可愛くて優しい、姉がいたの」


へえ・・・初耳。


「あの子が8歳のころよ。あなたを妊娠したの。生まれてくるとき、あの子は突然亡くなって、あんただけが残った」


・・・ほへえ。


「あの子のように育つことを願った。なのに!その汚らわしい赤い髪は何ですの?!」


何ですの、って言われても・・・ヒロインの設定ですが。


「あんたが幸せになることは許さない」


あなた、が、あんた、になってるよ、怖い。


「いい?これ以上殿下に取り入ったら、編入させますから。庶民の学校へ」


足音が聞こえて、廊下が静かになる。


庶民の学校かあ・・・令嬢が入ってきたら、嫌だろうな。


どうでもいいことを考えつつ、眠りに落ちた。




あさ、あさと言えるのか微妙な今。


4:00。


学校なう。


開いててよかった。


教室にはもちろん、誰もいない。


・・・まじで、勘弁してよ。


ヒロインさいなら。


私、逃げようかな。


イヤ逃げるとしてもどこへ?


悶々と考えていたヒロインだった。




「・・・ライト、どう思う」


「朝早くからひどいですねー。というか今何時?5時ですよー!」


一応侍従のライトは主の前で、当たり前のように文句を口にする。


いい度胸だと思うがそんなことはどうでもいい。


「学校に行ってくる」


「早!」


上着を羽織ってカバンを持ち、城を出て、歩く。


いつもは馬車だが今日は散歩でもしようと。


別に学校が遠いわけではない。


歩いて15分ほどだ。


・・・それにしても、どうしてやろうか。


ティアラ嬢の、親。9割母の方。


本人は寝不足だと笑っていたが、医者からは事情を聴いている。


『あの精神を治すには、幸せになるしかないのさ』


なんだかかっこいい言葉を言われたかと思うと、次はこういわれた。


『でもね、あの子、周りの幸せに自分から突っ込もうとしなさそうだし・・・殿下、頼みますよ』


とりあえずうなずいたが、どうすればいいかわからない。


そもそも、彼女については分からないことが多すぎる。


なぜ最初、うざいくらいアピールしてきたのか。


まあ、すぐに嘘だと分かった。


それとも、それを狙ったのか?


・・・いいや、それはない。


単純なティアラ嬢には無理だ。


あれは、本当に好かれたくてアピールしていたのか。


ああいう風にすれば、好意を向けてくれると思っていたのか。


いつも一人だし、昼食の時も俺がいないときは一人。


悪口を言われても気にしていない。


ただ、精神がもろい(らしい)。


強いのか弱いのかわからない。


そんな令嬢だった。


しばらく歩いて教室へ行く。


すると珍しく、先客がいた。

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