第10話 安定の野営

 かくかくしかじか……とは行かず、アリアからプレイヤーがゲームの中の住民になんと呼ばれているかとか、基本的な事を教えてもらいながら、未だに人に矢を向けている獣人の男に説明。


「で、何故にまだ攻撃体勢?」

「モンスターを連れているからだ!」

「この子達は家族。仲間。問題なし」

「リンセちゃん、テイムモンスターって言った方が早いですよ?」

「……テイムモンスター」

「そうか……って、ならばテイムモンスターの証しはどうしたっ!?」

「?……そんなのは無い。街とか行ったこと無い」

「は?いやいや、異邦人ならば街に最初に降り立つだろう?」

「私、降り立ったのこの森。日が暮れる。立ち話は無駄」

「む?……うぅむ、いや、しかし」

「しかしも、何もない。夜の森は危険。案内ないなら野営1択」

「くっ……こっちだ」

「分かれば良い。お礼に、いらない肉やる」

「いやいや、お礼でいらない物を普通に送るな」

「クマ肉にゴリラ肉。臭いからいらない」

「いや、調理すればその肉は食えるぞ?というか、強いんだな。フォレストベアにフォレストコングだろ?それ」

「……調味料も調理器具も持ってない」

「いや、それ森を舐めているだろ」

「着の身着のまま森に放り出された」

「いえ、リンセちゃんの選択結果ですよ?」

「まぁ、良く生きて居た方だな。っと、ここが俺の住んでる部落だ。ようこそ。狼牙族の村へ」



 そこから、狼牙族の男に(簡易)ギルド兼宿屋兼雑貨屋まで案内してもらい、ようやく休めるが、夜の闇が迫ってきてる。しかし、部屋で寝れるのは私だけらしい。ログアウト時間も迫ってるし。仕方なく、毛皮とか皮とか牙に爪とか討伐証明部位以外のいらない物を売って、そのお金で雑貨で木ボウル(大)×1と干し肉×5を買ってから、部落から出て北側の柵の近くで野営する。

ただ、このままログアウトしても、仲間達にはご飯をあげれないので、私を守ってもらいながら、狩りもしてもらう。勝手にドロップがインベントリに入らないように設定して、狩った物をそのまま食べれるように。後、ちょっと穴を掘って、インベントリからお肉を出して、生は腐りやすいから、軽く焼いて、穴に入れて土を被せる。これ朝食用ね?忘れないでね?別に今食べても良いけど、ちゃんとご飯食べるんだよ?後は遠くに行きすぎない事と、昼と夜でちゃんとチーム分けする事、仲良く過ごす事、部落の獣人や人に迷惑をかけない事。うん、これくらいかな?じゃ、ログアウトしよう。




 さて、後は歯を磨いて寝るだけだけど、真衣お姉ちゃんはまだゲームしてるのかな?……お?リビングに亮治兄を発見。多分、あの言語設定亮治兄だよね?本体の設定ってアリア言ってたし、真衣お姉ちゃんはゲーム設定だけで本体設定なんて弄らないはずだし。


「亮治兄お帰り。ハード?の本体設定ってやったの亮治兄?」

「ん?おう。そうだ……どうした?問題あったか?」

「……ギルティ」

「え?何で?」

「私、スペイン語、まだ全部読めないし書けない。分かるの、会話と少しの単語だけ」

「あ……すまんすまん、忘れてた。話せるイコール読み書き出来るって訳じゃないもんなぁ」

「それと、プレゼント、どこ?」

「誕生日の?ハードに電子マネーが入ってるよ。ゲームで課金する必要があったら、使う用な。確かあのゲームって幾つか課金アイテム系有ったはずだし。街の中の教会とか課金ショップって店で買い物出来たはずだ」

「街……良く分かった。アイス所望」

「好きだよなぁ、アイス。後で買ってきて冷凍庫に入れとくよ」



さて、用は済んだ。歯磨きして寝よ。

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