第2話 再会

 数ヶ月後、男は何人かの仕事仲間と一緒に空港前で集合していた。彼等が此処に居る理由は、病院周りの治安の悪化、また病院や住居拠点への襲撃等が有り、身の安全を守る為に国外への一時避難である。尚、帰国するのもいれば、次の現場に向かう者も居る。もう一度、この国、あの街に来るのは何時になるか分からない。それに、別の街になる可能性の方が強い。


 そして、この場に集まっているのは帰国組である。あの病院に最後まで居るのは、資材やノウハウを覚えた現地人で、違う場所で病院をするか、他の街に行く人達だけだ。それ以外が帰国組、周辺で活動している国へ合流する組等だ。


『ギャゥッ!』

「うおっ!?」


 帰国組の仲間が揃い、空港の中に仲間と一緒に入ろうとして、突然、腰に衝撃が来て転び、ボサボサの長い髪が視界に入った。




 数時間前、子供は必死に走っていた…いや、逃げている。アジトで襲撃を受け、倒れる仲間を他所に、無傷な仲間は散り散りに、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。安全な巣に帰ろうと思ったが、子供と並走していた野犬は撃たれて倒れた。このままでは、無事に巣に戻っても、自分が奴等を巣まで誘導してしまい、全員やられるかもしれない。相手はルールを無視し、やたらと攻撃的な連中だ。だから、大通りに出て必死に逃げる。一応の警官達が動き出しているのも見えた。ならば、後は生き残る為に全力で逃げねば!と子供は頑張って走った。走りながら家族に危険を知らせる為に何回か叫んだ。


 しかし、子供が発した危険信号は、あまり役には立たなかった。何故ならば、子供を悪い連中から守るために、子供を追いかける連中に対して、何匹も向かっていったからである。そう、子供の家族である野犬や野良猫、野鳥達である。


 だが、所詮は子供の体力、かなり逃げた方だが、足は限界に近くもはや全速力で走る力はあまり無い。そんな時に、子供の目には仲間ではないが、仲間達お世話になった男達が見え、最後の力とばかりにダッシュしてその男達の一人に抱きつい(タックルし)た。



 そして現在に戻る。


「いてて…『どういう状況?』」

『さぁ?とりあえず離れてもらって、受付に行こうぜ?』

『いや、なんか離れないというか、がっちり掴まってるんだけど?』

『ん?そういや、この子といつも一緒に居た野犬とかはどこだ?』

『……死んだ。仲間も……沢山、死んだ』

『……は?』

『おいおい、物騒だな。まぁ、元々ここら辺はb』

『半分は、お前らのせい……逃がさない』


 とりあえず、なんか外に居るのはまずいと判断して、空港の中に入って詳しい話を子供に聞いてみた。


 そしたら、元々あの病院があった場所は子供が所属していたグループのテリトリーだった。で、俺達はそこで健康診断やら予防接種やら炊き出しやらしていたわけだ。だが、他のグループは俺達の病院に行くにはタダで行ける訳じゃなかったらしい。所謂、通行税だな。で、グループ同士で話し合いをしようにも俺達は勝手に活動していった。


まぁ、何回か俺達というか病院側に他のグループの場所でも同じ活動をするように言ったらしいが……俺達がそんな話を聞いたことがなかったというので察せる。その結果が、俺が撃たれた原因の一つであり、俺達がこの国から去る原因であり、子供のアジトが襲われた原因でも有るわけだ。仲間の1人が慌てて現地病院に居る仲間に電話をかけている。だけど、全て後の祭りだろうなぁ。抗争はもう始まっているし、病院の安全が保てるわけがない。この子は……しょうがない、袖振り合うも多生の縁という事で大使館で親父に一旦、保護してもらうか。スペイン語は話せるけど孤児っぽいし。少しでも自分の罪悪感を消したいし。

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