Another World Century

双頭蛇

プロローグ

第1話 出会い

……パンッ!パンッ!パンッ!

 夕暮れ時の暗い路地裏でその音は響いた。そして、舗装されてない道に流れる赤い液体、走り去る数人の足音。


「ははっ、しくったなぁ。注意はしていたけども…これ程だったとは。早いとこ止血して病院に行かないと……ん?」

《グルルルル》

「おいおい……マジかよ?」


 撃たれて地面に倒れた男。しかし、撃たれた場所はとっさに胸を庇った右腕、そして、両足。だが、男のピンチは続いている。上体を起こした所で、血の臭い釣られて来たのか、数匹の野犬が男向かって歩いて来ているのが見えた。


『ガウッ、ガウッ!』

「ん?子どm、うおおおおおおおおおおっ!?」


 犬の鳴き声ような泣き真似みたいな声を聞き、そちらを見ると、ボロボロの服に、ボサボサの髪の子供と分かった所で、野犬2匹に上着を咥えられ、路地裏を引きずられて行った。そして、子供の側に青年がやって来た。


『おい、どうしたんだ?いきなり走り出して』

『ん。怪我人、病院、運んだ』

『……まさか犬を使ってか?』

『ん』

『余計に怪我されたら運んだお礼で金貰えなくなるだろっ!?』

『???…それより、テリトリー内、発砲、ルール違反』

『……そっちは任せろ。お前はちゃんと運んだか確認して、金貰ってこいよ?』

『……ん』


 青年と子供は話した通りに別れて、それぞれの目的を達成するために動き出した。青年は、自分達のテリトリー内で発砲したテリトリー外の奴の引き渡しと、男から奪っただろう物もあわよくば貰いに。子供は、野犬達に運ばれた男が無事に病院に着いたのを確認し、お金を貰うために。


 数時間後、子供はとっくに病院に着いたが、中には入らず、野犬達と一緒に男が出てくるのを待っている。男が治療を終えて入院しているとは知らずに。そして男は、手持ちの現金は財布ごと取られたが、幸いにもパスポート等はホテルに有り、知り合いが多く、ホテルから荷物を持って来て貰い、無事に入院費や治療費を払っている事等知る良しもない。そして、子供が病院に入らない理由は、針を刺されたり(注射)、水責めでごしごしされたり(垢落とし)と色々されるからである。ここより少し遠くにある元々あった病院ならそんな事はされない。この病院は最近出来て、地元の人より知らない人達が多く、仲間内の何人かは身綺麗になって世話をされたりしている。


「ん?……『なあ?あの子は?』」

『あの子?…あぁ、炊き出しは食べに来てくれるけど、お風呂はあまり好きじゃないみたいで、予防接種もうまくいってない子だな』

『なら、目の前に居るんだし、確保しやすいんじゃないか?』

『バカ言え。犬が問題なんだよ。まだ噛まれた奴は居ないけど、襲われた奴は居るんだ』

「『ふうん』……厳しい世の中だな」


 男は、入院室から偶然子供が見え、様子見に来た同僚に子供の事を尋ね、割りと溶け込めてきたと思っていたが、それが一部だったことに、世の中の厳しさを思い出した。


これが、子供と男が最初に出会った出来事である。

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