魔女アイドルの事件簿

（八）

　　同じアパートメントビルでも、マリーナの家はベティの家ほど豪華さはありません。非常にではありませんが、ベティの家はまだ裕福と言えるでしょう。彼女のお父さんは何かしらのファンドマネージャーだと聞いたことがあります。一方で、マリーナの家は小さくて快適な雰囲気があります。

　　事前に確認しましたが、9時までにマリーナの兄は帰宅しない予定ですので、2〜3時間ほど利用できます。まず最初のことは、紗希がマリーナの前で変身し、問題がないか確認することです。紗希から始めるのは、何か問題が起きた場合、マリーナが再び美夏に変身することができなくなるためです。美夏は有名なアイドルですので、突然姿を消すことは問題を引き起こす可能性があります。

　　二人はしばらく時間をかけて以下の事実を確認しました：

　　- 魔女の前で変身することには問題がありません。

　　- マリーナの魔法は、軽いもの（例：ペン）を少し隔空移動できます。物の重さが増すほど、一度に移動できる距離が短くなります。

　　- マリーナの隔空移動魔法は、変身後に使用する必要があります。

　　- 紗希の魔法は特定できませんが、マリーナはそれを第六感だと考えています。紗希はそれによって自分の魔法を見つけたと述べています。

　　- マリーナは、まだ二人は魔法使いとは言えない、何も知らない魔女は魔女とは呼べないと考えています。

　　- 紗希は、二人の瞳の色が薄くなり、深い青色に変わったことに気付きました。黒色ではなく、変身前後の両方でそうでした。紗希が言わなければ、マリーナも気付かなかったでしょう。

　　- 魔法を連続して使用することは非常に疲れる。

　　- 年齢が近いこと以外に、お互いの選ぶ基準がわからない。マリーナはクラスの友達に尋ねてみたことがありますが、友達もよくわからなかったようです。

　　- マリーナは紗希よりも約1か月早く変身アイテムを受け取りましたが、それ以降の連絡はありませんでした。

　　紗希も幽霊を見た経験をマリーナに話しました。マリーナは大いに興奮し、質問を投げかけたり、紗希が見逃したことを残念がったりしました。マリーナは古玉美という少女も同じ経験をしていたことを話し、それが彼女も魔女なのか、それともただの偶然なのかと疑問を投げかけました。

　　　　　＊

　　紗希は学校に戻り、授業前に小蝶に会いました。紗希はベティが電子の歌姫ミントの演奏会を観るために登録したこと、金曜日の夜9時に行われることを伝え、彼女が興味があればベティの家で一緒に観ることを尋ねました。

　　「君も行くの？」しばらくの沈黙の後、小蝶が尋ねました。

　　紗希は頷きました。

　　「それなら、私も…行くわ。」最後の言葉は小蝶が非常に小さな声で言ったため、紗希はほとんど聞き取れませんでした。

　　紗希は小蝶に向き直り、ベティが注視しているのを確認しつつ、手で「OK」の合図を送った後、続けました：

　　「そうそう、ちなみに携帯電話持ってる？番号教えてくれる？」

　　携帯電話番号を交換した後、小蝶は本を引き出して読もうとしましたが、紗希が立ち去らずにいるのに気づいて、猶豫しながら彼女を見ました。紗希もまた迷って、やっと小蝶に尋ねました：

　　「そうだ、お聞きしてもいいかなって思ったんだけど…」小蝶が頷いたのを見て、紗希は勇気を出して尋ねました：「君の姉のことだよ。」

　　小蝶が反応しなかったので、紗希は続けました。「彼女は美夏の熱狂的なファンなのかな？

　　「一昨日、美夏と握手しているのを見かけたし、昨日も…」紗希は突然ある事実に気づきました。「一昨日、あなたの姉さんはテントの中にいたんでしょう？それって、もしかして…」

　　小蝶は頷き、しばらくしてから言いました。「そう、姉は一昨日の夜から並んでいたんです。なぜなら、最初の20人には彼女のサイン入りのCDが買えるだけでなく、握手もできるって言ってたんです。」

　　通霄で並ぶんですか？もしマリーナがこんな熱狂的なファンがいることを知ったら、どう思うだろう？紗希は考えました。マリーナは歌うことやパフォーマンスが大好きで、アイドルとしての活動に満足していると言っていたけれど、この事実はちょっと…

　　「でも、彼女はファンではないの。彼女は…アイドルが好きなだけで、どんなに人気があるアイドルでも好きなんだ。特定のアイドルに限らず、初回限定版やサイン入りポスターなど、コレクションしているんだ。」

　　「それならテレビ局でアイドルを見るのは？」紗希は言いましたが、すぐに自分の舌がすべったことに気付き、急いで続けました。「昨日、お母さんと一緒に行って、あなたの姉さんに会いました。でも、彼女は私を見ることはなかったと思います。笑」

　　「テレビ局は入場者に記念品を配布しているんです。姉さんはそれを集めるのが好きなんです。」小蝶は紗希の言葉を疑わず、話を続けました。

　　「それなら多くのお金と時間がかかるでしょうね。」

　　「彼女の仕事は比較的柔軟で、普段からネットで情報を集めて、最小の時間で最大の効果を出すよう努力しています。」小蝶の話す口調は、どこか冷静で、彼女が姉さんを好きなのか嫌いなのか分からないようなものでした。

　　「なるほど、」紗希は理解したように頷きました。そして突然思いついて尋ねました。「じゃあ、電子の歌姫ミントのオンラインライブに登録しているんですか？」

　　「いいえ、」小蝶は微妙に首を振りました。

　　「いいえ？」

　　「彼女はスタッフとして働いています。」

　　「スタッフとして？」

　　「うん。姉さんは今、電子の歌姫ミントの制作会社で働いています。以前、ソフトウェアを使用して電子の歌姫ミントの歌の一部をネット上で何度か公開したことから、スタッフとして招かれ、ミントの音楽の制作を手伝う役割をしています。彼女は普段は自宅で仕事をしており、必要なときだけ制作会社に出向いています。」

　　「だから彼女の仕事が柔軟なのね？」紗希は頷きながら、少しずつ理解し始めました。

　　「紗希？」ベティは紗希と小蝶が長い間話していたのを気にかけ、近づいてきて尋ねました。

　　「小蝶が金曜日の夜に来るって約束してくれたの。」紗希は言いました。「彼女の携帯番号を持っているから、連れて行くことになるわ。」

　　「それでいいわ。」ベティは笑って言いました。「だって、人数が多ければ多いほど、同じお金を使うわけだし、たくさんの人が見た方がいいもの。」

　　「そういえば紗希、」しばらくしてからベティが言いました。「デパートのそばに新しいチーズアイスクリーム店ができたって聞いたの。国際的に有名なチェーン店の最初の支店で、放課後に行かない？」

　　「冬にアイスクリーム？」

　　「チーズアイスクリームよ、アイスクリームじゃないわ。」

　　「何が違うの？」

　　「とにかく、行く？」

　　「遠いの？」

　　「うーん…ちょっと遠いけど、」ベティは急いで言いました。「でもすごく有名だって。」

　　「うーん…それでいいわ。」紗希は考えた後で言いました。通常ベティが紹介する店は美味しいので、特に予定がない限り、紗希は断らないことが多い…ただし食べるだけの場合に限って。そして紗希は小蝶に向かって尋ねました。「小蝶、あなたは？」

　　「私？いいわ、いらないわ。」小蝶は力強く頭を横に振りました。

　　するとちょうどその時、授業のベルが鳴りました。「そうか。じゃあ昼休みに話すね。」ベティが言いました。

　　「ＯＫ。」紗希は小蝶に手を振って、自分の席に戻りました。