第32話 彩雲祭に向けて②
それから昼になって、俺と美月はカフェテリアで悠馬たちと昼食を囲んでいた。
「さっきは助かった。サンキュ」
「ありがとう、二人とも。助かったわ」
俺と美月が素直に感謝の意を伝える。悠馬は、なんのなんのと謙遜をする。
「状況を変えられてよかった。あのままだとちょっとマズい流れだったからな」
「でも、俺と美月が幼馴染だってよくわかったな? 親公認は言い過ぎだが」
「いやまあそれは美月さんから聞いていた……ゴホン」
なにやら悠馬は咳払いで誤魔化す様子。その後にどうという事もない調子で続けてきた。
「でもマジで幼馴染なのか? いや、そんな感じはあったから口から出まかせなんだが」
「私もそうなのかなーって思ってた」
と、ユキが入ってきた。
「じゃないと、ミツキンがハルトんにいきなしコクハクとかイミフじゃない? ヒトメボレだと理由としては弱いかなーって。同じオンナとして思ったわね」
「「なるほどー」」
俺と悠馬が同時にユキに賛同した。
「でも、デザインの方、ダイジョブなの? それで遅刻でしょ、つまりのとこ?」
どうなの? とユキが心配してくれているという顔で聞いてきた。
「昨日遅くまで作業してて、俺も美月も朝は疲れてぐーぐー寝てたからな」
「昨日は取り掛かりで興奮してて。私も晴人と久しぶりで楽しくて、少し飛ばしすぎたわ」
俺と美月は素直に反省の態度を見せる。
「ミツキン。彩雲祭までまだ二か月っしょ。アセるのは分かるけど、ペース考えるべきジャン」
「そうね。ショー経験者じゃないけど、経験者じゃない分だけユキさんにはよく見えるのかもしれないわね。気を付けるわ」
美月が殊勝に納得の意を見せた。
そして俺が、悠馬とユキにずずずいっと顔を近づけて言い放つ。
「で、悠馬とユキのモデル訓練なんだが……」
「マジで俺たちモデルやるのか? 半分冗談なのかもなって思ってたんだが」
「悠馬とユキがいないと頭数が足りない。悠馬とユキは体躯も、彩雲祭のショーモデルとしては十分合格点だ。上から目線ですまん。もちろん二人は顔もいいんだが、モデルとしては身長と体形が第一で顔は二の次になるからな」
「マジやるのかーっ!」
「私は、ヤル気アリアリなんだけど!」
ユキが身体をしならせてポーズを作る。どうかな私? 的な格好がかなりのやる気を感じさせる。
「二人ともこれから彩雲祭まで毎日放課後一時間、美月にウォーキングを習ってもらう。プラス俺の送るデザイン画のメイキング動画、テキスタイルや、仮縫いを撮影した動画、他にもコンセプトにあった動画を編集して、ティックトックで配信してほしい。ユキのアカウントは市内の高校生でフォロワー数一位だろ? その実力を貸してくれ」
「わかったよ」
「りょ!」
悠馬とユキも納得してくれる。
「俺は先に美月の家に帰ってコレクションのデザインに取りかかる。美月が帰ってくる頃には数点上がってるから、美月に見てもらってディスカッション。夜は食事や風呂を挟んで、さらにデザインの製作と選定。一ヵ月でデザインを終えて後は外注。それからはショーの流れ、演出、音楽等の選定を進めて、校舎裏や体育館でリハーサルに進む」
「すげー本格的だな」
「いや、時間がないから完成度は満足いかないと思う。でももう一度ファッションをやるからには今できることを最大限に……むしろ今しかできない事を最大限にやって、着る瞬間にワクワクさせることができる服をもう一度作りたいんだ」
「私もそれでいいと思うわ。晴人の復活第一号としては充分。だから悠馬とユキさんもお願い。協力してください」
美月が丁寧に頭を下げた。俺も、美月と一緒に礼をする。
「そんなにかしこまらなくていいって。俺もユキも素人なんだし、気楽にやらせてもらうから」
「私は彩雲祭でバズるつもりアリアリだから!」
二人は明るい反応で俺たちに答えてくれた。
「すまない」
「ありがとう」
美月と二人で悠馬たちに感謝を伝える。
「そうと決まったら、今日から練習よね!」
やる気満々のユキが最後に締めてくれて、俺たちは彩雲祭のショーに向けての準備になだれ込むことになったのだった。
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