第6話 美月との学園生活

 ここで俺の日課について説明しよう。朝登校すると、悠馬とユキが寄ってくるのが毎日の日常だ。そこでホームルームまでお喋りをして、予鈴が鳴ると各々の席に戻っていくというのが日々のお決まりになっている。


 だから朝、悠馬とユキが俺の所に来るのはいつものことなのだが、恋人宣言後、それに加えて美月までもがやってくるようになってしまっていた。


 あれだけ大々的に美月が宣言して、その美月をぞんざいに扱うことなど出来ようはずもない。周囲が見ているし、流れとは言え美月の告白をきちんと断らなかった俺に非がある。


 だから、朝のホームルーム前は俺と悠馬たちと美月でおしゃべりをする時間帯になってしまっていたのだ。


 悠馬たちと美月の間に接触はないだろうから、最初の段階で簡単にお互いを紹介した。


「こちら、竹中悠馬と早川ユキさん。俺の親友。同じく、こちらは改めて紹介するまでもないが、久遠美月さん。なんというか……学園男子のアイドルで、一応、俺の彼女的な存在っぽい」


 美月が、悠馬とユキを検分するという目線を送る。


「悠馬君にユキさん、ね。悠馬君はさわやかイケメンで女子にモテそう」


「いや。確かにそうなんだけど、俺にはユキがいるから」


「ユウマ、いいこと言った! 自分でジョシにモテるって言ったけど、そのジョシたちより私を優先したから許す!」


 のち、ほんとに困ったものねという感じでユキが頭を振る。


「ユウマじゃなかったらジイシキカジョウだって笑う所なんだけど。ユウマはホントにモテるから……」


「好きでもてているんじゃないんだが……」


「当然っしょ! 私がいるのに他のオンナにイロメつかったらたたじゃ済まさないんだから!」


「俺は浮気はしないって」


「よろしい!」


 返答した悠馬とユキが目と目でアイコンタクトをして笑みを交わす。


 美月が微笑ましいという表情を浮かべた。


「二人ともとってもお似合い。いいお相手を持って幸せね。まあ私もいいお相手とお近づきになれたから、これから幸せになるんだけれど」


 言いながら俺を見つめてくる美月の目線が、なんとなく意味深だったりする。


 のち、ところで……と、美月は一拍置いて俺を問い詰めてきた。


「『一応彼女的な存在』ってなに?」


「いや、言葉の通りなんだが……」


 何と答えてよいのかと思案しながら、うーんと言葉を濁す。美月の声は落ち着いた抑揚だが、その目には怖さを感じる。はっきりと彼女だと答えればよいのだろうが、成り行きから考えて語弊がある感じがするし、聞き耳立てているクラスの連中の耳に入れて彼らの心中を波立てたくないという計算もある。


「はっきり俺の彼女だって言って欲しいのだけれど……。というか、『こいつは俺の女だ!』というくらいの積極性が欲しいのだけれど」


「それは流石に……」


 やはりというか、美月嬢は積極的な女性で、俺はその美月に押されっぱなしだ。


「そのくらいにしといてあげてくれ、久遠さん。晴人は、人並みに女性は好きだが見ての通り奥手なんだ」


「カンベンしたげて、ミツキン。でも、ハルトん相手ならミツキンがぐいぐい引っ張ってくくらいがいいカップルっしょ? ミツキンがハルトんを尻に敷いちゃえばいいの!」


 悠馬とユキがフォローしてくれた。つーか、フォローになっていなかったが。


「二人とも、晴人のことをすごくわかってるわね。晴人とこれからも仲良くしてもらえると嬉しいわ」


 悠馬とユキと美月。三人で顔を合わせて笑い合った。


 俺が蚊帳の外なんだが……。美月の制服の重圧、圧迫感と苦しさをいつも通りに感じつつ、三人で仲良くやってくれるならいいか、と思い直す。


 そんなこんなで、クラス、もっと言うと学園が注目する中、俺たち四人のグループが出来上がってしまったのであった。

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