第17話 先輩
翌日の朝。僕らは部屋の中でバラバラになって朝食をとっていた。
一足先に食べ終えた先輩が黙って立ち上がり、出てゆこうとする。
アカリさんが、こわごわと先輩に声をかける。
「先輩……」
「トイレだ。いちいち報告することもないだろ」
「一人で……ですか?」
「うっせーよっ! 大丈夫に決まってるだろっ!」
僕らは、その先輩を止められない。
僕が先輩と一緒にトイレに同行するという案も浮かんだけど……
もし仮に先輩が犯人だとしたら、僕の方の身が危うい。これは同行するのが春香だとしても、翠だとしても同じことだ。
ならば行くなと言えるかと問われると、それも難しい。
生理的欲求もあるだろうし、先輩からすれば独りの方が落ち着く、という部分もあるのだ。
だから誰も制止する声を出さず……
先輩は、そのまま荒げた声だけを残して出ていった。
◇◇◇◇◇◇
俺は部屋から出た。
そのままイラつく足取りで廊下を進む。
あいつらのペースに合わせて気さくな先輩でいるのは、もはや無理な相談だ。
気分がざらついて自分をコントロールできない。
もうそんなレベルじゃねーだろっ! と胸中で毒づく。
あいつらの中の誰が犯人かはわからない。
さらに、なんであいつらと一緒に閉じ込められなきゃならないのかもわからない。
仲良く茶化し合うのは以前なら何とも感じなかったが……今はもうただただ不愉快で気分が悪くて……そして自分の置かれた状況が不気味だ。
クソがっ! と歯噛みしながら廊下を進む。
それが不安の裏返しだということもわかるが、俺にもどうしようもない。
――と。
視界がぐにゃりと歪む。
意識がうつろになり……
まただ……。また意識がぼやけて……
俺はそのまま意識が真っ白になって……それから先のことは記憶にない。
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