第12話 失踪
さらに翌日。
僕が九時過ぎに起きると、既に起きていた春香に――先生と先輩――が部屋にいないと告げられた。
僕が起きたのは六人の中でラスト。その時点で春香も翠もアカリさんも既に起きていて、各々声をかけてから洗面所等に出たりもしてたんだけど、先生と先輩の姿はずっと見当たらない……という話だった。
調子が悪くてトイレに籠っているのか。あるいは一足早く二人で校内の探索に出かけたのか。
閉じ込められているのでどうにもならないという前提があってさほどの心配はしていないが、隠れているだろうナイトメアの存在もある。
どちらにしろ、春香たちに一言もないというのが気がかりといえば気がかりだという話だった。
僕と春香と翠とアカリさんで、ごはんとみそ汁と焼き鮭の朝食をとる。
どうしようか……とみんなで相談している時に――先輩が一人で戻ってきた。
「先輩!」
春香が驚いて、同時に安心したというように胸に手を当ててふぅとなでおろす。
「心配しました! どこ行ってたんですか?」
「わるい。トイレ」
先輩は素っ気なく、なんでもないという抑揚で答えたが、春香はちょっと納得していないという反応だった。
「でも朝の七時から今まで二時間戻ってこなくて。何か個人的な用事があるならそういうこともあるかもですけど……。一言、欲しいです」
「わるい。ちょっと一人になりたくて」
先輩はあくまで春香には答えない。
春香が少し突っ込んだ。
「体調とか精神とか……。大丈夫ですか?」
「それは問題ない」
「なら……いいんです。こういう状況だから、不安定になることだってあると思いますから」
「わるい」
先輩は最後に一言だけ付け足して席に座り、用意されていた焼き鮭を食べ始める。
春香も、今度は納得したという様子で自分の席に座る。
問題は解決した……と一旦は思ったけど……先生の方が戻ってこなかった。
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