第3話 港南市高校生連続行方不明事件
港南市高校生連続行方不明事件。
それは大きなニュースにはなってないし報道もされてなくて、実はそんな事件名もついてないんだけど、この港南市にある彩雲学園の生徒には周知されている事態で僕らはそう呼んでいる。
一年程前から、この港南市で高校生が連続して行方不明になっているという噂が、この街で流れているのだ。
もちろん個々人の都合なのかもしれないし、たまたま家出が重なっただけかもしれない。でもその中には彩雲学園の生徒もいて、その生徒が学園で有名なバスケ部のキャプテンだったこともあって、しばしば生徒たちの話題に上ったりもしている。
みんな、過度な緊張や警戒はしていないけど、生徒の中には誘拐だとかオカルト的な神隠しだとか興味本位に噂する人もいて、そういったことがあるという事は各々の念頭には入っている。
「私は雪也に返事を聞きに来たと同時に、雪也を犯人から守る事も目的にしているわ」
「犯人って……?」
僕はその翠の口から出た犯人という言葉がわからず問いかけた。
「犯人。誰かはわからないけど、これが事件だという確信が私にはある」
「事件……。確信が……あるんだ……」
翠があまりにも自信を持って断言するのは理解できない。けど、何故かは全くわからないけど、翠に確信があるのだけはわかった。
春香が、その険しさを持ち込んだ翠を柔らかくほぐすように挟んできた。
「確かにそういう噂、あるけど……」
「あるけど、なにかしら?」
「私の感じ的に、雪也君はそれ程怖がらなくていいと思うわ」
「感じ的……に、かしら」
「そう。雪也君が……その犯人に……殺されるとか」
春香が、突然、いつもの朗らかさからは想像できない様なビックリする言葉を口にしたので、僕は跳び上がる。
「春香さんは警戒心がないようだけど……」
「けど?」
「たとえ噂だとしても……万が一にも雪也が害されるのは避けたいと思うのは、私の執着かしら?」
「いいえ。全然そんなことない。でも、私は雪也君の安全には自信……というか確信があるので」
「ずいぶんお気楽でいいわね、春香さんは」
「いえいえ。気楽なわけじゃなくて、一人の女性としての確信なので」
その場面で予鈴がなった。
春香がじゃあまた、と言い残して自分の席に去ってゆき、教室は二時間目に突入するのであった。
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