第2話 家電屋さんにて その2
生活家電売り場には魅力的な商品がたくさんあった。
しかも普段は高額で指を咥えて見ていることしか出来なかった商品も、大セール中の今なら頑張ればなんとか手が届くところまできているのだ。
例えばこの『お掃除ロボット三兄弟』、ずっと欲しかったんだよね。
力の強い『長男』がごみ袋を回収したりお布団を干したりといった力仕事をして、手先の器用な『次男』が壁床掃除からトイレ風呂など水場掃除を担当、思考能力が高い『三男』がお掃除用品の補充や美化活動、殺菌消毒・漂白などの化学処理をしてくれる優れものだ。
お客の予算の関係で兄弟は割と高頻度で生き別れになるのだが、最近高性能版がリリースされたことで数世代前の型がセット買い出来るまで値段が下がっている。
こっちは『お家カフェDX』。
茶葉や牛乳、野菜や果物などの材料の仕入れからものによっては後片付けまでこれ一つで済む夢のような製品である。
飲み物のみが作成出来る簡素なものからパスタやオムライスなどの所謂「カフェご飯」を提供する料理兼用型、酒やコーヒーなど一部の料理に特化した専門型など種類が豊富なのが特徴で、我が家にもお茶専門機(洗い物非対応)が一つある。
この機会に洗い物対応型に替えようかな。
そんなことを考えながら売り場を好き勝手横断していたのだが、とある商品を見てふと足が止まる。
『相棒手帳』と書かれたそれは、「あなただけの手帳を作っていきませんか」という文言のポップと共に新商品売り場に澄ました顔で鎮座していた。
一見すると文房具店で見かける小洒落た革の紙ページの手帳とそう変わらないように見えるのだが、ページが無くなりそうになると自動で補充されたり、ナビゲーションマップや画像・動画といった電子情報を埋め込んだり、
普段は嵩張らないように錠剤から消しゴムほどの大きさで持ち運びが可能であったり(本のままの状態での保存ももちろん可能)と、我々が知っている手帳とは大分性能が異なる性質のものであるらしかった。
商品説明には使えば使うほど手帳側が学習していき、持ち主好みの見た目に変わっていくとある。
やたら電子機器が発達したこの世界だが、コスパタイパ最優先の最新機器信仰者と同じくらい、手書き手作りオリジナル最高派も根強く残っていた。
企業側も様々な顧客ニーズに応えるために商品開発をしているとのことだったが、紙と電子の中間のようなものが当たり前のように存在するのはこの世界ならではといっていいだろう。
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