異世界もぐもぐ回顧録
まんまる丸
ハイテク手帳購入まで
第1話 家電屋さんにて その1
働く者にとって嬉しい連休前の日。
元居た世界で例えるならば「花金」というやつである。
私はその日給料日で懐が温かかった。
もう少し詳しく書くなら、給料の他にささやかなボーナスと自分なりに頑張った証である残業代も一気に振り込まれたためぽっかぽかだった。
異世界で働いていても給料日はやはり嬉しいもので、その日もお気に入りの店でご飯を食べた後雑貨屋さんや家電屋さんを梯子するなどして、珍しく余剰金の使いどころを探し回っていた。
前から気になっていたちょっとお高いお茶でも買おうかな。
いや、いっそのこと老舗ブランドのドリンクメーカーとか買っちゃおうか。
そういやこの前雑貨屋にあった観葉植物、あれもおしゃれだったなぁ。
いやいや、このところ結構頑張っていたしどーんとご褒美買うってのもありかもしれない。
そんなことを考えながら、浮かれた気分で家電屋さんに入店した。
入店してまず目に飛び込んで来たのは入口に掲げられた「50周年感謝祭!!」の横断幕の文字。
隣にはチラシを配る店員さんが居り、「店内全品最大50%OFFでーす!」と元気良く声を張り上げていた。
「いらっしゃいませ~」
「50周年おめでとうございます」
ニコニコと接客する店員さんを見てなんだかこちらも嬉しくなり、ついそんなことを言ってしまう。
「ありがとうございます!そうなんですよ~おかげさまで我が社も今年で50歳になりまして。小さな町の家電屋さんから始まり今では全国に展開する量販店になるとは、昔は思いませんでした」
設立当初から働いている方なのだろうか。
そう語る彼の瞳は嬉しさと同時にどこか懐かしさも滲んでいた。
「それだけ長い間続くって凄いことですよね」
「不況やライバル店の台頭、取引先の生産工場の閉鎖など大変な時期もありましたがお客様に支えられてここまでやってこれましたね。……おっと、ついつい昔話をしてしまいました。話は変わりますがお客様、当店のアプリはインストールされてますか?」
「はい、ここよく利用するので。愛用してますよ」
「おっとお得意様でしたか、ありがとうございます。ただいま50周年クーポンが配布されてまして、これを使用すると最大50%商品がお値引きされますので、よろしければご利用くださいませ」
最大半額というのはこういうことだったのかと納得する。
これはもしかして買いたいものがお安く買えるチャンスなのでは?
幸い軍資金はそれなりにある。
店員さんと別れて、私は生活家電売り場に向かった。
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