第259話 問題の場所へ向かっちゃう、ぽっちゃり
おじさんから街の様子の原因をおおかた教えてもらい、大体の全体像は見えてきた。
どうやらラグリージュの街の周囲に例年通り謎の霧が立ち込めてきているという情報が入ったみたいだ。
だから街の住人もどこか活気がなく、ざわめいていたんだね。
そこでわたしがその霧の調査に乗り出そうと宣言すると、エミリーが不安げな顔で口を挟んできた。
「コ、コロネ様。『霧』問題を解決する、というのは……!?」
「とりあえずわたしの方でも探ってみようかなって。まあ解決できるかは分からないけどね」
「で、ですがこの霧は未だ原因不明ですよ……?」
「あー、そう言ってたね。たしか調査隊が調べても原因が分からなかったんだっけ?」
「ああ、そう聞いてるぜ」
わたしの質問に、おじさんがぶっきらぼうに答えてくれた。
おじさんの話によると、この調査隊は王都から派遣されたものらしい。
そんな隊員が、簡単な原因を見逃すとは思えない。
ということは、この霧の発生は複雑な要素が絡み合った末に発生した現象か、あるいは何者かが巧妙に証拠を隠した上で仕掛けている犯行かのどちらかだ。
そしてわたしは、ワンチャン後者の可能性があるんじゃないかとも思っている。
王都から直々に派遣された凄腕の調査隊の人たちが普通の自然現象を見抜けないはずはないし、少しくらい発生条件が特殊な現象なんかも頭に入っていることだろう。
それでも分からなかったということは、何かしら人工的な手が加えられている可能性が考えられる。
それにこの霧の問題もここ数年で突然見られるようになったものらしいし、それらの背景を含めても単純な自然現象とは考えにくい。
「まあ、とりあえずラグリージュの街を出てその霧が出始めてるっていうエリアまで足を運んでみようかな。霧が確認された場所は分かる?」
「ラグリージュの北部、他国から来訪した行商人が乗ってきた船を停めている波止場の奥の森から出ているらしいが……嬢ちゃん、本気でそこに向かうつもりか?」
「うん。このまま厨房に戻っても気になってもやもやするし、行くだけ行ってみるよ。あ、わたしは一応冒険者もやってるから、心配はいらないよ」
おじさんは心配そうな目で見てきたので、わたしの本職を伝えておく。
一応わたしの収入源的にはメインは冒険者業だからね。
「あの、コロネさん。私たちはどうしたら……?」
アリアちゃんがイリアちゃんと共に困惑した表情でやって来た。
今から厨房に行って明日のお祭りで出品する予定のお弁当の作り置きの作業をしてもらうつもりだった。
だけど、これは昨日やった仕事と全く同じだから、わたしがいなくても問題ないだろう。
問題が生じるとすれば作り終わったお弁当の保管場所だけど……。
「アリアちゃんとイリアちゃんは、昨日と同じようにわたしのお店で出すお弁当四種類を均等にできるだけ多く作っておいて! 完成したお弁当は、サラに渡してくれればいいから!」
「ぷるん!」
わたしは懐の中に潜っていたサラを取り出し、アリアちゃんに手渡す。
水色のスライムボディがぷるるんっと揺れた。
「この子はわたしと同じでアイテムボックスみたいなスキルを持ってるから、お弁当は保管できるんだ。容量とかも多分ないと思うから、好きなだけ大量に作ってくれていいよ!」
「はい、分かりました!」
「が、頑張ります!」
アリアちゃんとイリアちゃんはぐっとガッツポーズをして気合いを入れた。
「エミリー。皆の監督はお願いね。何か足りない物があったら後でわたしが払うから、何でも買っていいから」
「は、はい。承知いたしました。コロネ様はこれから本当に……?」
「うん。いっちょ問題の霧とやらの場所まで向かってみることにするよ! しばらく留守にするけど、皆お店は頼んだよ! おじさんも情報共有ありがとう!!」
わたしはそう言って皆にお弁当屋さんを託し、おじさんから教えてもらった方角へ駆け出していった。
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