第252話 感覚で支払っちゃう、ぽっちゃり
ひょんなことから突如として表面化した従業員へのお給料問題。
わたしが昨日から雇っているアリアちゃんとイリアちゃんの二人にどれくらいの賃金を支払うのが妥当なのか話し合っていた。
わたしとしてはまずは基本的な相場を知りたいなと思っていたんだけど、そんな折アリアちゃんが突然お給料はいらない宣言をしだした。
そのまさかの発言に驚きながら、わたしは答える。
「ア、アリアちゃん。もう一回確認させてほしいんだけど、さっきのお給料がいらないっていうのは……」
「? 言葉通りの意味ですけど。私、コロネさんにこんなにいい思いをさせてもらっているのに、その上お金まで欲しいなんて言えません! オベントーなる料理の作り方も学べて、しかも今はこうしてドルート様が運営されている高級ホテルの最上階で朝食まで食べさせてもらってるんです! もうこれだけで余裕でお釣りが来ちゃいますよ!」
「い、いやさすがにそういうわけにはいかないよ。お弁当の作り方を教えたのは業務内用として当たり前のことだから気にしなくていいし、このホテルの朝食に関しては実際に食べようと思ったらそこそこ高そうだから分からなくはないけど……まあそれもわたしのサービスの一環っていう風に思ってくれたらいいよ」
「いえ! お気遣いは結構です! 私だけじゃなく、きっとイリアもお給料が欲しいなんて思っていないと思いますよ! ね、イリア!」
「は、はい。私も特にお給料をいただきたいとは思っていません。コロネさんの下で働けただけで素晴らしい経験をさせていただけましたから」
急に話を振られたイリアちゃんは、少し慌てながら答える。
どうやら、二人ともお給料はいらないっていうので意見は一致しているらしい。
……うーん、でもなあ。
さすがにオーナーという立場であるわたしとしては、無賃金で働かせるというのも忍びない。
「よし! それならあれこれややこしいことを考えるのはやめた! 二人とも、これ受け取って!」
わたしはアイテムボックスから貨幣を二枚取り出し、一枚ずつアリアちゃんとイリアちゃんに渡した。
二人は驚きながらもキャッチする。
「こ、これ金貨じゃないですか!?」
「ほ、ほんとだ……!?」
目を見開く二人に、わたしは笑顔で応える。
「とりあえず昨日の分のお給料だよ。詳しい相場とかは知らないけど、まあそれくらいの金額ならいいんじゃないかなって」
金貨は日本円にして一万円相当だ。
だいたい日本でも一日通しでバイトしたらそれくらいの金額は稼げるだろう。
だから今回もそれくらいの金額を支払うことにした。
実際、昨日は昼から夜までアリアちゃんとイリアちゃんには働いてもらったからね。
これくらいが妥当な金額だろう。
「ち、ちょっと待ってください! こんな大金受け取れません!」
「そ、そうです! たかが見習いの私たちに金貨だなんて……!!」
だけど、二人はバンッと立ち上がって抗議してきた。
え、一人一枚の金貨の支払いってそんなにおかしかったの?
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