第251話 お給料に悩んじゃう、ぽっちゃり
「よし、それじゃあ朝食も食べ終えたことだし、今日も昨日と同じようにお弁当作りに励もうか!」
ホテルのスイートルーム、その一室で皆でテーブルを囲んでいる中、わたしはおもむろに口を開いた。
満足げにお腹をさすっているアリアちゃんとイリアちゃんも、わたしの言葉にハッと我に返る。
二人とも最高級の朝食を満喫してご満悦みたいだったけど、意識的に仕事モードに切り替えたように見えた。
アリアちゃんがビシッと姿勢を正して答える。
「はいっ! 今日もよろしくお願いします!」
「が、頑張ります!」
今朝はこの二人がいきなり現れたものだからびっくりしたけど、もう完全に意識が冴え渡っている今になれば特に驚きはない。
むしろ、思いがけず一緒にご飯を食べることができて嬉しいなって思うくらいだ。
アリアちゃんとイリアちゃんはまだ昨日出会ったばかりだけど、もうわたしの中ではすっかり馴染みの顔になっていた。
「二人ともわたしのホテルまで来てくれたし、今日はちょっと早めにお店に行こうか。万が一に備えて、お弁当は一つでも多く用意しておきたいしね」
わたしにはアイテムボックスという素晴らしいスキルがあるから、仮にお弁当を作りすぎたとしても何も問題はない。
アイテムボックス内に収納された物体は時間が停止した状態で保持されるから、食品系でも腐る心配はないのだ。
だから、今わたしが想定するべきリスクは作りすぎによる在庫処理ではなく、万が一このお弁当が反響を呼んで売れ行きが好調であった場合に売り切れ状態になることだ。
まあ、このラグリージュという街においてお弁当がどこまで受け入れられるかは未知数だけど、品切れで食べられませんでしたっていうのは避けたいからね。
それを回避するために、作れるときにお弁当を作れるだけ作っておきたい。
なにせ、
わたしが内心やる気に満ちていると、ふと疑問が沸いて出た。
「あ、そうだ。二人は昨日わたしのお店で働いてくれたけど、お給料とかって最終日に渡す感じでいいのかな?」
雇い主として重大なことを失念していた。
従業員のお給料問題だ。
本当は昨日の内に擦り合わせておくべきだったんだけどね……!
わたしの疑問に、またしてもアリアちゃんがビシッと手を上げて勢いよく答えた。
「心配しないでくださいコロネさん! 私たち、お給料はいりません!!」
「ええっ!? な、なにを言ってるの!?」
アリアちゃんのまさかの発言に、わたしはすっとんきょうな叫びをあげてしまう。
しかし、当のアリアちゃんはぽかんとした表情で首を傾げた。
「え? だって当然じゃないですか? 昨日はコロネさんからオベントーという料理を学んだし、作り方も教えてもらいました。もうそれだけで料理人としては価千金でお金なんてこれっぽっちも欲しいと思いませんでした。むしろ私がお金を払えと言われたらお小遣いの八割くらいまでなら喜んで払うレベルです!!」
「お姉ちゃん、そこはお小遣い全部って言っておこうよ……」
正直なアリアちゃんに、イリアちゃんがツッコミを入れる。
むう、このお給料問題、いったいどれくらいのお金を支払えばいいのだろうか?
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