第250話 朝食を共にしちゃう、ぽっちゃり
ふかふかベッドで気持ちよく眠っていたところ、エミリーに起こされてしまった。
わたしとしてはこのまま二度寝と洒落こみたかったんだけど、エミリーがそれを許してくれず渋々起きることに。
だけど、わたしはそこからさらに驚かされることになる。
「……それにしても、まさかアリアちゃんとイリアちゃんがわたしの部屋までやって来るとはね」
わたしはテーブルを前にし、朝食を摂りながらぽつりと呟く。
対面にはアリアちゃんとイリアちゃんが並んで座っていた。
二人以外にも、円形の大きなテーブルにはわたしのパーティーメンバー全員が勢揃いしている。
朝食はホテル側が手配してくれて、コンシェルジュのような妙齢の男性がご丁寧に持ってきてくれた。
メニューとしてはトーストサンドやサラダ、スープといったオーソドックスなものだけど、そのどれもめちゃくちゃ美味しい。
ナターリャちゃんやわいちゃんはさっきからパクパクと朝食を頬張っている。
まあ、かくいうわたしも朝食には心踊っているんだけどね。
わたしがむしゃりとトーストサンドにかぶりついたところで、アリアちゃんがごくりと喉を鳴らした。
「それにしても、ここのホテルの朝食はめっっっちゃ美味しいですね!! 使っている素材も最高級のものでしょうし、普段私たちが食べているようなものとは次元が違いますよ!」
「……結局、アリアちゃんはこのホテルに興味本位で来たかっただけっていうのが本音だよね?」
「えっ! い、いやだなぁコロネさん。そんなわけないじゃないですか。もちろんコロネさんの私生活から色々と勉強させていただこうという思が百パーセントですよ! 決して、ホテルの美味しいご飯が食べたかったわけではないですからね!?」
「……はあ。まあそういうことにしておこっか。実際、ここのホテルの朝食は美味しいからね。二人にも味わってもらえて嬉しいよ」
「そうですよね! シンプルなトーストサンドなのにこんなに美味しいなんて! イリアも美味しいよね!?」
アリアちゃんはいきなり隣で小動物のようにサラダを食べていたイリアちゃんに向き直った。
いきなり話題を振られたイリアちゃんは、慌てて口の中のものを飲み込んだ後、返答する。
「う、うん。そうだねお姉ちゃん。私もとっても美味しいと思う……! 食材が最高級なのもあるけど、それを調理している料理人さんの腕も相当なものだと思うよ。私も料理人を志す身として、すごく勉強になる一品だよ」
イリアちゃんはやや真剣みを帯びた表情で答えた。
アリアちゃんは感情を全面に出して朝食を楽しんでいたけど、イリアちゃんはちょっと冷静に分析的な視点で料理を味わっていたみたいだ。
双子でも料理に携わるスタンスは違うんだね。
感心しながら二人のことを見ていると、ふと疑問が脳裏によぎった。
「そう言えば、二人はどうやってこのホテルまで来たの? わたしが泊まってる場所なんて教えてなかったよね?」
わたしの質問に、アリアちゃんとイリアちゃんは互いに顔を見合わせる。
そして、イリアちゃんが申し訳なさそうに口を開く。
「え、えっと、それは――」
「昨日の夜、ドルート様から直々に教えていただきました!!」
アリアちゃんの快活な回答に、わたしは何となく思い描いていた予想が的中し、心の中でため息を吐くのだった。
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