第147話 海鮮チャーハンをかきこんじゃう、ぽっちゃり
海鮮チャーハンの出来上がりを待つこと数分、ようやくそれは完成した。
店主のおじさんの太い腕で振るわれる大きなフライパンの動きに合わせ、パラパラに炒められたチャーハンが宙を舞う。
それをお皿に盛り、おじさんはわたしたちに料理を差し出してきた。
「嬢ちゃんたち、お待ちどうさま! チャーハン大盛りと普通盛りだ!」
目の前に出された出来立て熱々のチャーハンに、わたしの目もキラキラになる。
「ふおおおおおお!! こ、これがラグリージュの海鮮チャーハン!!」
「すごーい! とっても美味しそう!!」
「隣に軽く食べていけるスペースもあるから、良かったら利用してくれ」
「ありがとうございます!」
屋台の隣に目を向けてみると、十人くらい座れそうなテーブルと椅子が備え付けられていた。
四人ほど先客もいるようだ。
わたしはナターリャちゃんと一緒に海鮮チャーハンのお皿を持ちながら、空いているカウンター席に腰を下ろした。
ナターリャちゃんも、わたしの隣に座る。
屋台の横に飲食スペースがあるなんて、ベルオウンではあまり見ない形態だ。
さすがは経済的に発展している街なだけはあるね!
「さて、それでは……」
わたしは大きなお皿に山型に盛られた海鮮チャーハンに向き直る。
お皿の横にはレンゲみたいな物も置かれている。
「海鮮チャーハン、いただきます!」
「い、いただきます!」
ナターリャちゃんと一緒に食前の挨拶をした後、レンゲを手に取りチャーハンに突っ込んだ。
そのまま掬い上げると、つやつやとした油でコーティングされた米粒と各種具材がレンゲの中に収まっていた。
おお……これは絶対美味しいやつじゃん……!
わたしはキラキラと輝きが見えるレンゲの中のチャーハンを眺めたあと、一思いに口に運んだ。
瞬間、ガツンとした香ばしいスパイシーさが口内に充満した。
それと同時に、パラパラの米粒が舌の上で踊った。
「うまぁぁああああああいい!」
ご飯とスパイシーさは言わずもがな、咀嚼すると主役の一人であるぷりっぷりのエビが弾けた。
他にも何か歯応えがある食材が……これはもしかしてホタテかな?
どっちもご飯と油に絡まって香ばしく味付けされていて、めっちゃくちゃ美味しい。
「んんー! これ美味しいね、コロネお姉ちゃん!」
「だね! なんか久しぶりに食べた気がするけど、やっぱチャーハンは美味しいなぁ!」
「コロネお姉ちゃんはこの料理知ってるの?」
「うん、前に何度も食べたことあるよ! あ、でも海鮮チャーハンはあんまり食べたことないかも」
わたしはガツガツとチャーハンをかきこみながら答える。
ちょっと止まんないわこれ。
久しぶりのチャーハンにわたしの胃袋が興奮している。
ここの屋台は割りと良心的なようで大盛りチャーハンは結構な量があるけど、このペースなら一瞬で食べきっちゃうね。
わたしが夢中になってチャーハンを爆食いしていると、おじさんが楽しそうに話しかけてきた。
「ハハハ、美味そうに食ってくれるなぁ嬢ちゃん! 料理人冥利に尽きるってもんだぜ!」
「うん! だってこれ本当に美味しいもん!」
「そりゃ嬉しいな! それに今年は
おじさんは笑顔で話してくれるけど、わたしは少し引っ掛かるポイントがあった。
「売上上位って?」
「ん? ああ、もしかして嬢ちゃんは旅行者かい?」
「本業は一応冒険者だけど、今回は旅行としてラグリージュに来たよ」
「そうなのか。なら知らないのも無理はないな。実はだな、今回の海豊祭は王女様が来られるそうなんだ」
「え、王女様が!?」
予想外のワードに、わたしは驚きに声をあげる。
「ああ、驚きだよな! 何でも今年の
「へぇ、そうなんだ。それで、売上上位になったら何かあるの?」
「まだ確定してるわけじゃないんだが、噂によると売上上位になった料理は王女様が召し上がってくださるかもしれないんだ」
「王女様が直々に食べてくれるの!? それはすごいね!」
「そうだろ!? いやぁ、王女様にはぜひともウチの海鮮チャーハンを味わっていただきたいもんだぜ!」
そう言えばここは王国だったから、王様もいれば王女様もいるんだね。
多分、王都みたいな国の中心地に住んでいるんだろう。
王女様が
日本じゃ王女様なんていないから、単純に興味がある。
そんなことを考えながら無心でチャーハンをかきこんでいると、いつの間にかお皿の上が空っぽになってしまった。
なのでわたしは、お決まりのセリフを叫んだ。
「おじさん! チャーハン大盛りおかわり!!」
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