第139話 商機を見いだされちゃう、ぽっちゃり
ポテト×ケチャップの悪魔的美味しさに感動して、皆で夢中になって食べまくっているとすぐにまたポテトがなくなってしまった。
次のポテトを新しく揚げることはできるけど、それでも少し時間がかかる。
そのおかげでクールダウンできたのか、夢中でポテトを食べまくっていたわたしたちは一旦水を飲んで落ち着きを取り戻した。
「このポテト、ケチャップをつけると本当に止まりませんな。つい夢中になって食べてしまいました……いやはやお恥ずかしい」
「そんなに気に入ってくれたなら良かったよ! でも、普段からいいものを食べてそうなドルートさんがここまでポテトにハマるとはね」
ドルートさんは王国でも三本の指に入るほどの巨大な商会、〈アイゼンハワー商会〉を運営している有力者だ。
それだけの地位にいれば自然と貴族たちとも交流を深めているだろうし、いつも食べているものも高級料理とかばかりなんじゃないだろうか。
高級食材や一流料理をたくさん食べてきて舌が肥えているであろうドルートさんが、ここまでケチャップつきポテトを気に入るとは思わなかった。
もうすでにわたしと同じくらいポテトにハマってるんじゃない?
ドルートさんは、少し恥ずかしそうに笑った。
「そうですね。普段私が口にしているような料理とは随分と毛色が異なるものでしたが、大変美味しくいただきました。ですが、これは食べすぎると少し胃にクるかもしれませんな……」
「ああ、それはあるらしいね。ドルートさんはわたしの倍以上年上だろうし、こういう油っこい食べ物はあんまり大量に食べない方がいいかも」
「ナターリャはへっちゃらだよー!」
「あはは。元気いっぱいのナターリャちゃんならこんなポテトくらいじゃ体は何ともないかもね」
ぶっちゃけ、わたしもポテトを大量に食べても胃もたれや胸焼けなどは今まで一度もしたことがない。
わたしの胃は強靭で、体はタフなのだ。
そう簡単にわたしの体が不調を訴えることはない。
だからこそついつい食べすぎてしまうことがあるのが玉に
美味しい料理を人よりも長くたくさん味わえるんだから、幸福な人生を歩んでいると考えておく。
わたしが自分の健康な体に感謝していると、ポテトを食べて満足げだったドルートさんの表情が変わった。
「しかし、これほど美味な料理を今しか作られないのは少々もったいない気がします。コロネさん。こちらのポテト、私は売れる気がしております」
「え、売れる?」
「はい。このポテトを売って商売を行えるということです。ポテトにはそれだけの商品力があると思います」
「うーん、まあお祭りとかの出店だとポテト専門のお店とかもあったしね」
「そうです! コロネさんが良ければ、ラグリージュに店を出してみませんか?」
ググイッ! と前のめりになるドルートさん。
わたしはドルートさんが言った内容を冷静になって考え、仰天する。
「ええっ!? わ、わたしがお店を!?」
「はい! ぜひこのポテトという料理をラグリージュの住民にも知っていただきたいのです! いかがでしょうか?」
「いや、そんなこといきなり言われても……ていうか、お店ってそんなに簡単に出せるものなの? なんか営業許可証みたいなの必要なんじゃない?」
「そちらに関しては問題ございません。ラグリージュは私が拠点を置いている街ですので、それなりに融通は効きますので。コロネさんの出店許可証は一日と経たず発行されるでしょう」
ほう、さすがは王国有数の権力者。
ドルートさんが頼めばわたしの出店許可証とやらを発行するのなんて簡単って訳か。
いや、だけどやっぱり話が急すぎるよ。
わたしはただ自分が食べたいポテトを再現するために試作してみたに過ぎない。
結果としてめちゃくちゃ美味しいポテトができたからそれは嬉しかったけど、このポテトで一旗揚げようなんて全く考えていなかった。
腕を組んで、どうしたものかと考えていると、傍で話を聞いていたナターリャちゃんがわたしの腕を引っ張った。
「コロネお姉ちゃん! ナターリャ、コロネお姉ちゃんが開いたお店でポテト食べてみたい!!」
「えっ、ナターリャちゃんまで?!」
「ぷるるーん!」
「サラも賛成なの!?」
「コロネさん! 私が長年〈アイゼンハワー商会〉を通じて培った直感が告げております! このポテトは間違いなく売れると!!」
ナターリャちゃん、サラ、そしてトドメのドルートさん。
三人からポテトの店を出すよう進められ、押されまくる。
わたしとしてはあんまりピンと来ていないんだけど、まあ皆がそこまで言うなら……!
「うーん……わかった。それじゃ少し考えてみるよ」
「おお! ありがとうございます、コロネさん!」
「言っとくけど、考えるだけだからね! まだ出店を決めた訳じゃないから!」
「おや、そうなのですか? ふむ、まあラグリージュに着けばコロネさんの気持ちも固まるでしょう。商売の中心地であるラグリージュの名は伊達ではありませんからね」
「コロネお姉ちゃんのお店楽しみ~!」
「ぷるーん!!」
「いや、だから皆わたしの話聞いてる!? まだ店を開くって決まったわけじゃないからね!?」
わたしの叫びは空しく草原に響き、なぜかラグリージュでポテトの店を開くことが決定したような雰囲気になってしまった。
わたしはただポテトを作って食べてただけなのに、どうしてこんな流れになったんだ……!?
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