第137話  ドルートさんも病みつきにさせちゃう、ぽっちゃり


 サラとナターリャちゃんにポテトの美味しさを広めていたのもつかの間、あまりにもポテトが美味しすぎたのかわたしたちで食べていたらすぐになくなってしまった。

 と言うわけで、今わたしは本日二回目のポテト作りに励んでいた。

 一回目と同じようにサラにジャガイモを切ってもらい、水を含ませてデンプンを抜き、そして油を浸した鍋に適量のポテトを入れてもらう。

 油は一回目のポテトを揚げてからあまり時間が経っていなかったからかすぐに高温に達し、今はじゅわじゅわとポテトがこんがり揚がってきている。

 上から鍋の中で揚がるポテトを見ているだけで食欲がわいてくるね。


「よーし、そろそろいいかなぁ~?」

「コロネお姉ちゃん! ポテトできた!?」

「ぷるん!」


 穴の空いたお玉杓子で鍋の中のポテトを確認する。

 うん、ほどよく揚がっていい感じ!

 揚がり具合を確認したわたしは、お玉でポテトをすくい、できるだけ余分な油を落としてトレイに移していく。

 隣にいるナターリャちゃんもワクワクした表情でできたてのポテトを眺めていた。

 ポテトに興味津々なナターリャちゃんを微笑ましく思いながら、わたしはアイテムボックスから塩を取り出してひとつまみする。


「ポテトが揚がったよぉ~! あとは塩を振りかけて……完成!」

「わーい! またポテトが食べられるー!」

「ぷるるーん!」


 再び完成した第二弾のポテトにわたしたちは喜びに声をあげる。

 早速食べちゃおうとナターリャちゃんがポテトをつまむと、反射的に手を引っ込めた。


「あちち!」

「大丈夫ナターリャちゃん!? このポテトはいま揚げたばかりだから、まだ熱いかもね。あ、そうだ! サラ、ポテトを食べる用にフォークを出してくれない?」

「ぷるん!」


 お願いすると、サラは木製のフォークを何本か出してくれた。

 これで熱いポテトも触らずに食べられるね。

 わたしはフォークを受け取ってサクッとポテトを刺すと、そのフォークをナターリャちゃんに差し出した。


「はい、ナターリャちゃん! このフォークを使って食べるといいよ! でもポテトは中も熱いから、口の中を火傷しないように気をつけてね」

「わあ! ありがとう、コロネお姉ちゃん!」


 ナターリャちゃんは熱いポテトに気を付けてはふはふしながら頬張った。

 出来立ては熱いけど、やっぱりポテトは熱々に限るからね!


 わたしもナターリャちゃんに続いて食べようかと思った矢先、一人の人物がテーブルにやって来た。


「なにやら美味しそうな匂いがしますな」

「あっ、ドルートさん!」


 わたしたちの元にやって来たのは、涼しげな軽装に変えたドルートさんだった。

 ドルートさんは、わたしたちが囲んでいるトレイの中にある料理に目をやった。


「おや、コロネさん。こちらの料理は……」

「ああ、これはポテトだよ。ジャガイモを切って油で揚げて、塩をまぶしてるの。よかったら一つ食べてみる?」

「おお、よろしいのですか。では、一ついただいても?」


 わたしはフォークでポテトを刺して、ドルートさんに渡す。


「はい、どうぞ! いま揚げたばっかりで熱いから、食べる時は気をつけてね!」

「ありがとうございます。それでは失礼して……」


 ドルートさんはフォークに刺さったポテトを色々な角度から眺めると、パクッと口に入れた。

 もぐもぐと噛み進める内に、だんだんとドルートさんの目が見開かれていく。


「おお! これは何とも食べ応えがある料理ですな! 外はカラッと揚がっているのに、中はほくほく。それにジューシーな油もクセになる!」

「お、ドルートさんもわかるんだね! ポテトはまだあるから、よかったら食べていいよ」

「むむ……そ、そうですな。ではもう一つだけ……」


 ドルートさんは一瞬ためらったけど、すぐに追加のポテトを頬張った。

 まあポテトって何でも美味しいからね。

 わたしも某ハンバーガーチェーン店のポテトが大好きで、Lサイズのポテトを買い込んでジュースで流し込んだりしていた時期もあったよ。

 わたしが今回作ったポテトも、思ったよりいい感じに出来上がっている。

 唯一惜しむらくがあるとするなら、塩味のポテトしか食べていないってことかな。

 やっぱりポテトと最高にマッチするあの調味料が欲しくなる……!


「はあ~……欲を言うならケチャップとかあったら最高なんだけどね~。あ、もしかしてドルートさんケチャップとかもってたりしない? なーんて……」

「ございますよ」

「まあ、そうだよね。そんな都合よくケチャップなんて持ってるわけ……って、ええっ!!? あ、あるの!?」


 ダメ元で……というか、ほとんど愚痴るようなテンションで要望を口にしたんだけど、そんなタイミングよくケチャップを持ってるなんて!

 わたしは驚きと嬉しさのあまり、不思議そうな表情を浮かべるドルートさんの肩をガッシリとつかんだ。


「ドルートさん! どうかケチャップをわたしに恵んでください!!」




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