第132話 BBQでワイワイしちゃう、ぽっちゃり
「うん、やっぱり外に出たらすぐに草原っていうのは気持ちがいいね!」
わたしは両手を広げて全身に夜風を感じながら、独りごちる。
皆も一旦ログハウスから出て、わたしの後をついてきてもらっている。
「あ、あの、自分たちもご一緒して良いのでしょうか?」
「ドルート様とは違い、ただの御者の身分なのですが……」
控えめに言い出してきたのは、ライツさんとドルートさんの御者さんだ。
そう言えばこっちの人は名前聞いてなかったな……。
だけど、晩ごはんを囲むのにそんなことは関係ない。
ここまで一緒にやって来たんだから、今さらバーベキューに参加させないなんてこと言うはずがないよ。
わたしは振り返って、安心させるように二人に答えた。
「そんなの当然だよ! せっかくのバーベキューなんだから、皆で楽しまないと!」
わたしがそう言うと、二人とも少し顔を見合わせた後、笑って応えてくれた。
これで気兼ねなくバーベキューを楽しむことができそうだね!
わたしが満足していると、今度はエミリーが傍に寄ってくる。
「でも、コロネ様。どうして突然バーベキューなんですか?」
「そりゃあ、今わたしたちはラグリージュに向けた旅路の途中なわけじゃん? だったら、ちょっとアウトドアな感じで晩ごはんをとってみてもいいかなって」
せっかくサラが鍋やフライパンといった調理器具を作ってくれたんだけど、あのまま普通にエミリーに晩ごはんを作ってもらったんじゃいつもとあまり変わらないからね。
いや、もちろんログハウスっていう特別な空間での食事にはなるんだけど、どうせならアウトドアっぽい方法でご飯を食べてみたい。
「わーい! ナターリャ、バーベキュー楽しみ!」
「わたしも~!」
「ナターリャちゃんもフランちゃんも乗り気みたいだね! よーし、それじゃあサラ、バーベキュー用の道具とか作ってくれる?」
「ぷるーん!」
わたしがお願いすると、サラはぴょーんとジャンプしてログハウスのデッキの周囲を囲う柵に飛び乗った。
そして、ぷるぷると震えた後、スライムボディがぐにっと広がり、大きな物体をゴドン! と草原に吐き出した。
わたしは目の前に落とされた黒い物体を見て、声をあげる。
「おおっ! これは見事なバーベキューコンロ!!」
細い四つの足に台形の胴体。
胴体部となっている場所の上には網が敷かれていて、ここで食べ物なんかを焼けるようになっているみたい。
しかも全体的にサイズもかなり大きめで、一度にたくさんの食材を焼くことができそうだ。
使われてる材質も黒っぽくてメタリカルな感じがするから、これもアイアンゴーレムの素材を使って作ったのかな。
「ぷるーん! ぷるーん!」
わたしがバーベキューコンロを興味深く観察していると、サラが追加で二つバーベキューコンロを吐き出した。
どちらも全く同じ形状だ。
すると、傍で見ていたドルートさんが目を光らせる。
「ほお、これも中々に素晴らしいですな。着火剤はぜひ私の物をお使いください。火のつきが良い物を持っておりますので」
ドルートさんはアイテム袋から着火剤を取り出し、バーベキューコンロに火をつけた。
本人が言っていた通り、本当に一瞬で火がついたね。
「着火剤なんて……ドルートさんって本当に何でも持ってるんだね」
「ハハ、たまたまですよ。しかし、肝心の食材の方の当てはあるのでしょうか?」
「ああ、それは任せて! そっちの方はわたしが……というかサラがストックしてくれてるから!」
「ぷるん!」
サラがぽよんと跳ねると、スライムボディからポポポポン! と何かが飛び出し、バーベキューコンロの網の上に乗っかった。
そこにあったのは、串に刺されたお肉。
中には玉ねぎっぽい野菜なんかも刺さっていて、バーベキューでよく見る串焼きになっている。
すでにドルートさんが火をつけてくれているので、お肉がじわじわと焼け始めた。
まだ火をつけたばかりだから網が温まっていないけど、もうしばらくするとお肉がじゅうじゅうと焼けていくだろう。
「おおおお! 美味しそうな串焼きのお肉! 早くできないかなぁ!」
「ほお、コロネさんの従魔は食材まで出すことができるのですか」
「そうだよ! てか、むしろこっちが本来の能力なんだよね。サラにはわたしが倒した魔物の回収と解体を頼んでるんだ」
「なるほど。見たところ串焼きに使われているものもオーク肉のようですし、こちらもコロネさんが倒された魔物ということですか」
「多分そうだと思うよ。まあオークとか何体倒したかわからないくらいだけど」
オークはわりとポピュラーな魔物だから、《魔の大森林》に行ったらちょくちょく見かけたからね。
異世界に来て初日にもオークの群れに襲われたし、狂乱化現象の時も大勢いたからかなりの数を倒している。
「ふっふっふ、というわけで、今日はバーベキューを食べまくるぞー! 皆も遠慮せずにガンガン食べていってね! 食材は山ほど持ってるから!」
「ぷるーん!」
わたしの言葉に皆も、おおお! っと歓声をあげる。
昼食はドルートさんが持っていたものを食べさせてもらったから、今回はそのお返しにわたしの手持ちの食材を解放しようじゃないか!
わたしはサラに追加で数十本の串焼きをお願いし、残りのバーベキューコンロもフル稼働してじゅうじゅうとお肉を焼いていった。
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