第39 話 何の話?

「ねぇお母さん!僕、お話作ったの!聞いて!」

「あら、なんのお話?」

「あのね」


 子供が母親に話したのは、次のような話だった。


*******


 モクさんという人がいました。

 モクさんはある時好きな人ができたので、思い切って名前を聞いてみました。


「あなたのお名前を教えてもらえませんか?」

「私はモクと言います」


 なんと、モクさんが好きになった人は、モクさんと同じ名前だったのです。


 やがて、モクさんとモクさんは、一緒に住むようになりました。モクさん達は一緒に住んでいる家に風鈴を飾りました。風鈴は風が吹くと


 リン


 と、きれいな音を鳴らしました。


 何年か経つと、モクさんたちの間に子供ができました。その子供はとても静かな子供だったので、家の中はいつでも


 シン


 としていました。


 終わり。



*******


「えっ?終わり!?」


 突然終わった子供の話に、母親はびっくりした。けれども、子供はキョトンとして言った。


「うん、終わりだよ?だって、できてるじゃん」

「え?できてるって、何が?」

「えー?お母さん、分かんないの?」


 子供はがっかりしたような顔をして母親を見る。

 と、母親は唐突に気づき、驚いたように我が子を見て言った。


「やだ、天才?うちの子ったら!将来は漢字博士かしら」


【終】

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