第26話 仲直り

「なによ、『ヒヨクレンリ』って!そんな難しい言葉で誤魔化さないでよっ!」


 彼女は完全に怒っている。

 怒っている、というか、拗ねている、というか。

 そもそも、事の発端は身に全く覚えのない浮気疑惑。最近時間が合わなくて会えていなかった寂しさが、どうやら爆発してしまったらしい。

 だから、彼女を宥めるために、「君とはこの先もずっと比翼連理の関係でいたいと本気で思っている」と告げたところ、キレられてしまったというわけだ。


「『比翼連理』っていうのはね、いつまでも2人で一緒にラブラブ、ってことなんだけど」


 仕方なく、分かりやすく彼女に説明をすると、彼女の顔から怒りの表情が消えた。


「なんか、学校の授業で聞いたことある気がしてきた……」


 ホッとしたところへ、彼女の可愛らしい言葉が。


「要するに、『さくらんぼ』だね!」


 さくらんぼのようにポッと頬を染め、すっかり機嫌を直した彼女。

 腕を組んで、思い切り体を寄せてきた。

 もちろん、その体をさらに抱き寄せながらも、心情的には複雑だった。


 まさか、『さくらんぼ』が『比翼連理』に勝るとは。

 それでも、まぁ。

 仲直りできたのだから、良しとするか。

 ちょうど今、我々2人はまさに『さくらんぼ状態』なのだから。


【終】

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