第25話 夢
少年は、最新型のゲーム機が欲しかった。
喉から手が出るほど欲しかった。
周りのみんなも親に買ってもらっていたので、自分だけが仲間外れにされているような疎外感も感じていた。
少年は何度も親に最新型のゲーム機を強請った。諦めることなく、何度も何度も。
その度に、親からは突っぱねられた。
今どきのゲーム機は、気軽に購入できるような安価なものではないからだ。
ある日、少年は夢を見た。
夢の中で少年は、ようやくのことで親に最新型のゲーム機を買ってもらうことができた。大喜びした少年は、目覚めてそれが夢であったことに酷く落胆したが、正夢かもしれないと、すぐに母親に言った。
「ねぇ、お母さん!ゲーム機買ってくれるの!」
「買わないって言ってるでしょ?」
「でも、夢の中のお母さんは買ってくれたよ?!」
とっておきの切り札のように、意気揚々とそう告げた少年に、母親は満面の笑みを浮かべて言った。
「良かったじゃない。それじゃあこれからは夢で好きなだけゲームができるわね」
あてが外れた少年は、肩を落として泣いた。
「なぁ、ゲーム機買ってもらえたか?」
友達に聞かれた少年は、それからこう答えるようになった。
「うん。……夢の中で、ね」
その後少年は何度も、両親からゲーム機を買ってもらう夢を見た。そして、目覚めた時の虚しさに、何度もため息を吐いたのだった。
その年の誕生日。
少年はようやくのことで、両親から念願の最新型のゲーム機をプレゼントされた。
少年は喜びのあまり、その夜、プレゼントを抱きしめて眠りについた。
もう、ゲーム機をプレゼントされる夢を見ることはなかった。
その代わりに、友達にこんなことを話している夢を見た。
「僕も買ってもらったよ、ゲーム機!一緒に遊ぼう!」
【終】
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