第18話 星

「『星』になりたいんだよね」


 唐突に彼が言った。


「え?死にたいの?なにかあったの?やめなよ」


 読んでいた本から顔を上げ、彼の顔を真っ直ぐに見て、彼女は真顔で返す。


「いやいや、そっちの『星』じゃなくて!スターだよスター!みんなの憧れの的、キラキラ輝いているスター!ねぇ、なれるかな?!素質は十分だと自分では思うんだけど」


 呆れたように、でも目を輝かせて彼は言う。


「『星』って、自力では光れないものも多いんだよね。恒星と惑星ってあるでしょ。恒星なら自力で光る事ができるけど、惑星は恒星の光を反射するだけだから。あ、太陽系では恒星の代表格はもちろん太陽よ」


 さして興味もないように、彼女は彼から視線を外し、本へと戻しながら答える。


「……よくわかんないけど、じゃあ、光り輝くスターを目指すには、『星』じゃなくて『太陽』ってことだね!」


 意気揚々と声を上げる彼。


「確かに、その暑苦しさなら、星よりは太陽の方が向いてるかもしれないわね」


 本から目を離すことなく、彼女は言った。


「でも、燃え尽きて本当に『星』にならないように気をつけて」



【終】

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