第2話 私の幻想的な未来
ちょうど3年生に進級して間もない頃だった。高校生活最後の年だから、受験生だからこそ、思いっきり楽しんでやるって思っていた矢先だった。不思議と驚きも、悲しみも湧かず、ただ置物のように医師の話を聞いていた。なんとなく私は平均よりは長く生きられないんじゃないかって思ってた。大人にはなれども老後の生活なんて想像がつかなかった。たださあ、いくらなんでも早すぎなんじゃないの。私、大人にすらなれないんだ。仕事をして、家庭をもって。私が理想としている、あれだけ憧れた大人に、なれないで終わってしまうのか。その事実を実感する度に少し早めに魂が抜けそうな感覚に陥る。ああもし、私が来世で大人になれたら、何をしようか。よーし、来世の私の人生設計開始!まず、健康に生まれて大人になれるって確信があったら、もう少し勉強を頑張っておこうかな。うんと努力して、今の通信制なんかじゃなくて、ちゃんと昼間に学校に通って授業を受けて、友達と笑い合う。そんな青春を謳歌してみたい。大学にも行きたいな。自分だけのテーマを持って、気が遠くなるまで研究をしたい。大学を首席で卒業とかも、できたらかっこいいなあ。やりたい。来世の私に期待だな。それから、仕事をして、プレゼンとかもしちゃって、上司とか部下と食事もしてみたい。あと、恋人って呼べる人もほしいなあ。生涯を共にしてくれるような優しい人がいい。あったかい家庭を一緒に築いてくれる人。そんな家族がほしい。できれば高校生あたりから恋人は欲しいかも。それから…。思考だけがぐるぐる巡ってる。軽いのに、体は鉛みたいだ。これを自分自身で体験できないことが悔やまれる。なんでこんな運命を背負っていかなきゃならないんだ。前世は凶悪犯か?私はそう考えているうちにいつの間にか寝てしまっていた。
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