分析科長 近藤 紀子 映像記録日誌
◉REC
急な依頼が殺到してきて手が回らないわ。先ずはもっと人手を要求します。
当面は日記記録や報告書も作業効率軽減の為に割愛させてもらう。作業しながらの同時進行にてこの動画で報告とさせて下さい。
上からのこの追加案件まで、ずっとカブラや残された検体や細胞からの研究の分析をしていたのだけど、それらは全て中止状態。そこを理解した状態でこの追加指示書の内容を私はとりあえず把握して行きますよ。そこの所もよろしくね。
ええ・・・っと
『サル痘及び天然痘に類似したウイルスが外部で多発・・・・・・』
現地住民の一名が実験体Bの分裂体(単為生殖した個体)に襲われ瀕死状態から復活。しかしその後、上記ウイルスに感染・・・・・・
ちょっと、アルビーとオリバー以外は殲滅したはずじゃないの!?
・・・で、えー、実験体のB分裂体は回収分以外の可能性として、地下の下水から外部へ逃走したと思われる・・・あー、身を挺して分裂体と心中を図ったあの兵隊さん・・・こいつだけ生きてしまっていたのね・・・・・・
発見した町では地元警察と害獣駆除業者、ハンターたちが総出で捜索し駆除が完了。その間の被害者は現状6名。研究所職員たちと同様の被害だと思われる。実験体の回収は数日で送られる予定。
・・・
私が一番心配していた展開になっちゃったわね。
突然変異体であろうが、人工的な単独種だろうが、生命というのは複数の種で維持される。いい例が現に”性別”という二つの同種。
YとX、同種ではあるが異なる染色体を持った二つの個体があり、それぞれの『人生』を送りその過程での環境に適しその情報を遺伝する。そのかけ合わせこそが進化であり淘汰でもある。
ウイルスであれ細菌であれ、それらの”免疫”を相互の持ち合わせて進化・・・いや、環境に順応していき時には退化していく必要がある。
もしなんらかの生物がこれで完璧、完全体だと断定したならば、何らかの変異により現れる『天敵』の存在ですぐに絶滅する運命になってしまう。
その天敵がウイルスだとすると、ウイルス自体にも繁殖が最大の目的であり『宿主』は選ばなければならない・・・ウイルスの特徴として、繁殖が全てだと言っても過言ではない。なのである程度の宿主が安定化すると宿主を殺してしまうほどの毒素は自分にとっても不利になり、狂暴性=致死率が低下し弱毒化するものなの。
しかし、その『仮宿』が単独の生物だとすれば、その繁殖方法を変えざるを得なくなる。毒素を多くして自分達で外部に浸食しに行く為の保菌期間を定め、宿主を少しだけ延命した状態で活動をさせて、その最後は爆発的に猛威を振るい外部へと移行するようになる。
その状態でキメラ化した実験体がなんらかのウイルスの保菌者、並びに仲介者となればどのキメラ細胞、遺伝子がその反応をしたのか等がそもそも分からない・・・多様性を持たせた遺伝子ならば、それに順応したのかもしれない。
ヒューマンジーの初期実験段階からヒトの遺伝子は組み込まれているために、宿主が実験体からヒトへ変わるのにそんなに時間は要しない。多くの遺伝子を組み込んだ分、他の生物との互換性も上がっている。このキメラ生物実験体はウイルスにとっても優秀な仲介者と成り得るのだ・・・・・・
例えば鳥インフルエンザなどの様にヒトには直接に感染しないのだが、鳥類の遺伝子を組み込んだ実験体を経由すると適応、そして変異してヒト感染を容易にするだろう。それは他の生物にも当て嵌まり、どこのどんな菌やウイルスを貰いどこの誰に渡すのかは実験体の支配的な遺伝子情報によって変わってくるのだが・・・これらは全て推測の範囲を出ない。そこまで人類は遺伝子を解明できていないのだから。
ジャンク遺伝子というのがまだまだある。そこの中にこれらを決定付けていく情報もあるだろうが、そこまでの解明に人類が費用をかけていないのが現実だ。つまり、解明をしても金儲けにならないってことよね。
ああ、ごめんなさい、話が脱線したわね・・・・・・
まぁ要するに、複雑化させた実験体の遺伝子に入ったウイルスたちも複雑化しちゃうよね、って話ね。
ここを懸念して警戒レベルを
まぁ、まだ決まった話ではないけどね。
さて、その私の推理の証明をしていく作業を開始するわけだけど。
先ずは感染して死亡した経緯と、実験体の足取りね・・・・・・
実験体が捕まったエリア、実験体に接触した被害者にこのウイルスに感染しているかどうか。から始めますか・・・・・・
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