July 21

 昨夜はあの後、オリバーを車まで二人で担いでまた後部座席へ寝かしておいた。通気としてフロントガラスを開けたままにしていると、また逃げ出すかもしれない。閉じ込めておかなければならない為、夜とは言えこの夏の熱でやられないようにアイドリング状態で車内エアコンをつけておいた。テールランプなどは泥で埋めて、車ごと森の茂みに隠してからまたタケダのキャンプ地まで戻った。ガソリンはタケダがここまで乗ってきた軍用車から半分、私が気を失った昼の間に入れてくれていた。気が利くし、本当に良い奴だ。


 オリバーが何を食べるのかまでは全く分からないが、また目が覚めた時のため用に念のためリンゴや木の実、バケツに水を入れて足元に置いた。麻酔弾は人間用の物を打ち込んだので、体格差的にも通常よりも長く寝るし覚醒後もリラックス状態が続き、当分の間は強力な睡魔が襲いかかるはず。


 また川辺のキャンプ地にわざわざ戻ったのは私の治療と身体を冷やす必要があるからだと言われた。

 その処置後また直ぐに、気絶するように私は寝てしまっていた。




 翌朝、多分早朝だと思う。目が覚めた時もタケダは私が寝る直前に見た光景と同じ場所、体制で起きていた。その時になぜここまでしてくれるのかと聞いた。そもそも私の話を信じてくれたのかが一番気になった。すると、私の話の深部まではまだ疑心的ではあるが、思い当たるような事が有りずっとその事を考えていたという。



 タケダの母も同じ軍人だったそうだ。その姿が私と被さるように見えたことも、最後の方で恥ずかしそうに言っていた。タケダの母は軍の経理などを担当している部署へずっと配属されていて、日本軍の資金廻りについてずっと”ぼやいていた”ことがあると。タケダ自身も入隊しエリートコースへの道を進んでいるのも、母の疑惑や懸念を確かめる為という使命感も有ったかららしい。


 その母曰く、連合や同盟国との繋がりで軍資金や支援金が動くのは分かる。そして、それらは長くやっていると時期やタイミングに法則性が出てくるものだそうだ。各国の予算会議や決議のタイミングもスケジュール通りな為、慣れたように自分からそのデータや貸借対照表バランスシートのようなものを国税庁に催促していた程。


 そんな業務の中で、まあまあな金額が変なタイミングで動いている事があるそうだ。大体がデジタル請求書のやり取りが主流なので、仕分け区分は雑費、雑収入などと最初は適当に振り分けられてたがその区分にしては金額があまりに大きかった。

 上司にその事を確認しても「知らん、気にするな」としか返答がない。まあ、その時もタケダの母は自分には、”自分の業務”としては関係が無い事だしどうせその上長も何も聞かされていないだろう。そんな雰囲気でその場は流したが、タケダの母にはそれからどこか頭の片隅に引っ掛かりが出来てしまったらしい。


 その後、当分の間その不定期な雑収入は無くなったのだが、今までには無かった程の金の動きがどんどんと出てきた。その分、処理量が増えていき仕事量も増えて、ずっとそのことで”ぼやいて”いたのだと。それらは区分や名目はバラバラでそれらしい文言で追加され続けてきた。


 そしてそれも何年も続くのだが、その追加され続けていくその仕事たちには例の”規則性”が全く無かったそうだ。まるでその場しのぎの対応って感じがずっとしていた。


 そんな最中、殆どがデジタルデータだったのが、何通かの手書き領収書や請求書や小切手が届くことがあった。その裏手に、消されてはいるが鉛筆でなにかメモを書いてしまって、消しゴムで消されている痕があった。そこを薄く黒くまたえんぴつで塗りつぶしていくと、筆圧次第では文字が見えてくる。映画でもよくあるシーンよね。


 そこには全て漢字で書かれている何かの単語だった。調べてみると『SRC』の一国である、中国語だったらしい。





※補足


≪東南アジア諸国連合ASEANに日本が加盟し『大東南亜連合JASEN』が誕生した。そこにソ連と東ドイツなどの旧ワルシャワ条約機構が友好国としてどうなるかが今の世界では注目を浴びていて、個人的にはこの度の研究結果次第だと思われる。そうするとJASEANが、中国、韓国、カザフスタンやイランなどの『中央アジアBRI共和連盟SILK ROAD CONCEPT(通称SRC)』を囲う形となり、軍事的にも流通経路としてもSRC側としてはその旧ワルシャワ条約機構のJASEAN加盟には断固として反対したいはず。


 欧州の諸国とアメリカはずっと『北大西洋条約機構NATO』を結んでいて揺るぎない関係性を続けているが、NATO加盟国であるドイツ全体が今回にて東ドイツ共にどのような動きを取るのかを欧米側はずっと睨んでいる。私個人的な推察では、現アメリカの今研究への関わりはここにあるのではないかと思っている。


 つまり・・・ずるずる、ちまちまとした『冷戦』を終わらせるための

『大戦』へのきっかけとして・・・・・・≫

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