近藤教授との会話録音 2

 近藤教授が向かった先、監視室へと到着した。


「・・・ちょっと、いいかしら?」


「・・・ああ、近藤さん。どうかしましたか?」

 警備員が振り返り、気さくに返事をする。


「ここの監視カメラは録画もしている?」


「はい、常時1ヵ月分は自動保存されていますよー」


「今すぐ再生出来る?例えば数分前とか」


「ああー、はい大丈夫ですよ」


「見せて。B質疑室から退室した浅倉主任を追いたいの。時間は・・・そうね、大体30分前よ」


「了解しましたー、ちょっと待ってて下さいねー」


 警備員が座っているデスクトップモニターに映し出される風景が、警備員のマウス操作でどんどん切り替わる。


「ここの部屋ですねー?・・・ええっと、時間、戻して行きますねー」


 画面に歩いている人達が、後ろ向きにどんどん高速で戻って行く。


「おっと、この辺ですかね?」


「ええ、ありがとう。この浅倉主任が館内でどの順番でどう移動して行くか、追ってちょうだい」


「了解でーす」


「真っ直ぐに・・・出口に向かうわね・・・躊躇が無いわ」


「おいおい、カメラは流石に出入口までしか映らないぞ。ここの外までは設置してないからな」

 私は心配になり割って入った。


「・・・ええ、どこに行ったかなんて見てないわよ。この歩く速度・・・この速度で一目散にどこへ向かうか、もしくは寄り道するならどこか、を見てるのよ。この、そそくさと急ぎ外へ向かっているわよね。それだけで意図は十分よ」


「へぇ、なんだか怖いねぇ」


「・・・??ちょ、ちょっとまって!止めて!」

 近藤教授はまるで目が輝いている様な眼差しでモニターを見ている。


「浅倉が構内から出た直後まで戻して。そこから・・・ズームとスロー再生は出来る?」


「ああ、もちろんですよ。ええっと・・・・・・」


 警備員は監視カメラ映像のメニューを開き、操作する。


「・・・お願い、よく見せて」


 そう言って警備員を椅子からどかせて近藤教授自身が座り出した。


「ここで映像を進めれるのね?」


「はいそうですよー、左クリック長押しでどんどんコマ送りに進みます」


 モニターには構内メイン出入口上部に設置された監視カメラから、浅倉を右斜め上から移している画面だった。


「・・・・・・!!」

 ジーっと見つめているうちに、近藤は何かに気が付いた様だ。


「ねぇ、このPC、ネットには繋がってる?!」

 そう言って、右側にあるべつのPCを指さす。


「はい、大丈夫ですが・・・・・・」


「ごめん!ちょっと使わせて」


 警備員にパスワードを入力させて検索し始める。検索キーワードはだった。画面に映る浅倉主任の手元をアップに手の動きと、検索した手話の画面と交互に見合わせていく。



「・・・お・・・ま・・・た・・・せ・・・・『』・・・・・・」


 画面を見ながら小さくそう呟いた。


「??『』?どういうことだ?」


 その時、近藤教授はずっと握りしめながら持ち歩いていたを見つめていた。




CHIMERA ~嵌合体~ 第一章『百花繚乱』


       END



『CHIMERA』舞台設定【裏話】サポーター限定 近況ノート⇩

https://kakuyomu.jp/users/silvaration/news/16818093086661915701



⇩NEXT CHIMERA ~嵌合体 第二章『有為転変』

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