近藤教授との会話録音
「・・・これは・・・浅倉さんに見せなくて正解だったわね」
「なぜだ?」
「・・・いいから。私から説明しておくから、これは見せないで。お願い」
「まぁ、私はどちらでも構わないが」
「・・・トラビスとオリバー・・・えっと、C-2実験体とその子の方はどうだったの?」
「火災で丸焦げの遺体が2体、対象の部屋から見つかった。回収し確認中だ」
「そう・・・あ、ねぇ、そういえば、この大野教授のカメラはなぜ撮影出来ていたの?停電で電気系統は全滅だったはずでは?」
「各階の特別研究室だけは保管用の検体やデータなどを扱っているため、予備電源は独立して出来ていたよ」
「・・・え?」
「あと3階の特別研究室、つまりエヴァの部屋はカメラがそもそもが設置されていなかった」
「・・・1階は?!」
「カメラの設置は有ったが、浅倉の特別研究室は殆どが焼けていてね。一応これだけ回収できた」
紙袋に入っていた物を取り出し机のうえに並べていく。
・ハンディカメラ
・子供用オモチャ多数
・半分ほど焼けたA4サイズの資料各種
・直近2ヵ月分の日記のような物
・ブロンドヘアのかつら
「!!これは?!」
「??ただのウィッグさ。どうした?」
近藤教授は颯爽と部屋から飛び出していく。遠くの方、声が少し聞こえる場所で警備員との会話、というより、けたたましい質問と指示が聞こえる。
「浅倉さんはどこへ?!」
「あ?あ・・・えーっと、もうジープに乗って、また病院へ送られたと思いますが・・・・・・」
「この無線は繋がってる?!」
「ああ、はい」
「貸して!」
ガガッ・・・ピーーー・・・「・・・浅倉主任を送迎している警備隊、聞こえる?浅倉は居る??」
・・・ガガッ《・・・いえ、忘れ物をしたと言って、1人で戻られましたが・・・・・・》
「1人で行かせたの?!もう!バカ!!直ぐにあなた達も戻って!浅倉を探しなさい!」
《は、はい!》
「・・・ど、どうしたんですか?」
「あなた、何人か連れて念の為この建物内で浅倉が居ないか探してきて。これは重要任務命令よ。分かった?」
「わ、分かりました!」
「見つけたら確保して、私のとこへ連れてきてちょうだい」
困った様子で近藤教授が戻ってくる。
「・・・なんなんだ?」
「・・・確実な、決定的な証拠が無いわね」
「???」
「このハンディカメラの中は見た?」
「ああ、確認はしたが、別に大したものは映っていなかったがな。大体がX-2実験体と遊んだりしている動画だった」
「見せて」
ハンディのミニモニターでチェックを始める。
「アルビーの体毛は・・・銀毛なのね?」
「ああ」
「ブルーノは?」
「たしか、茶色?っぽい感じだったな。・・・ああ、そいつの写真データに何枚か入ってるぞ」
そう言ってカメラを手に取って操作し、写真を表示して見せた。
「これは・・・まさか・・・・・・」
動揺と少し混乱しているようだ。
「だから、なんだよ」
近藤教授はハンディカメラをプロジェクターに繋いだ。
「これは・・・モスマンが危険因子とみなされ処分される前、1階の檻の方じゃなく2階の実験室で隔離されていて、そこから飛び出してくる場面ね」
プロジェクターに繋がれたままのPCを操作して映像を見せる。
「・・・ここ!この一瞬しか映らないけど、この後ろ姿・・・ミッシェル隊員の発言と時系列的に『ブルーノがモスマンを昏睡状態から目覚めさせ、拘束を解いた』とばかり思っていたの。でもこの実験体の体毛は・・・茶色には見えないわよね?」
「うーん、まぁ、多分・・・遠いし、画質が荒いなぁ・・・・・・」
「とにかくもう一度、浅倉主任に色々と聞かなくちゃいけなくなったわ・・・場合によってはポリグラフ検査も必要よ。この映像も鮮明に処理して貰いたいわ」
「・・・ちょっと、まだ俺には状況が見えてこないな」
「黒人研究員などを拷問したのはブルーノで間違いなさそう・・・だけど、モスマンの解除がブルーノじゃなく『アルバート』、X-2実験体だとすれば・・・・・・」
「この画像も不鮮明だし、まだなんとも言えないなぁ」
「各実験体の”錠”の解除は?ブルーノだって言うのも、ミシェル隊員の発言、憶測だけじゃない。もし違ったら?」
「主犯はX-2実験体の、その、アルバートっていう個体だっていうのかい?どこからが計画の範囲だ?キメラが卵を産む所からか?そこまでの知能が在ったって言うのかい?」
「・・・分からない・・・とにかく浅倉主任に”尋問”しなきゃ・・・それに、各特別研究室は独自電源だったのなら・・・イヴはどうやって隔離部屋から出れたの?」
また近藤教授は退室しようとする。
「おい、どこにいくんだ?!」
とりあえず、私は後を追った。
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