CHIMERA~嵌合体~第二部/第一章『有』
Michelle Miller Diary (ミシェル・ミラー 日記)※翻訳済
【SUMMER July 2 「detention」】
今現在、私は謹慎中だ。
大佐の計らいで、私は国際犯罪、国際法違反として極刑は免れた・・・尋問時の流れで大まかな方向性をお互いに照らし合わせて、報告書にもそのように記した。
・・・いや、私の為だけの話では無く、米軍側の責任とされ多額の補助金、助成金などの削減理由にされるのを恐れての配慮だったと言える。
今回の事態が収束しなければ・・・いや、少しでも”悪転”すれば、その罪まで被せる為の『保険』として現在、私は保留中にされているに過ぎない。
必ず、逃げなければ。まさかヘッドセットカメラのマイクだけが生きていたなんて・・・冷静では無かった。仕方が無い。あんなバケモノどもが作られているなんて。許せない・・・・・・
なんとか『亡命』しなくちゃ。祖国のアメリカ中央情報局CIAか、 国防総省ペンタゴンにこの件を明るみにし、自分の命を、家族を守らなければならない。
『
ただ帰れたとしても「証拠」が無ければ、誰も信じてもくれない。話を聞いてすらくれないだろう。
そう・・・トラビス。
あの時、私はブルーノの件で完全に逆上していた。ブルーノを火刑にするまでは全実験体と、生み出した研究員も全員を殺してやろうかとも思うほどに怒り狂っていた。正直、三階でモスマンや分裂体が暴れているということを聞いて、神の天罰が下ったとも考え清々した程だ。
あの後、私はトラビス親子が収容されている部屋に行き困難し怯えている実験体を見て、最初は撃ち殺そうとしたが踏み留まった。我々が怯えながら捜索をしていたのに、この実験体は逆に怯えていたのだ。
それはまるで、私が最初に階段前の廊下で真っ直ぐ突進してくるブルーノと対峙した時の私のように・・・・・・
なぜだろう・・・なぜか、その時は躊躇しトラビス親子を憐れんだ。
繋って
ブルーノをこの手で討伐できた達成感と安堵感で、更に自分の恐怖が親子に重なったのだろう。わが子を守る様に抱きしめている母性が、自分と重なったかもしれない。
牢屋に錠は繋っていなかった。部屋の入口と牢の戸を開け放ち、逃げるように促した。途中で後発隊に見つかり討伐されるのなら、それもこの生物たちの運命だし、逃げ切れたならそれもそう運命が導いたのだろう。そんな気持ちだった。
火の手が回ってくる前に、二階で転がっている二体の死体をなんとか運び込んだ時には、トラビス親子は自分達の部屋にはもう居なかった。恐らく、私が銃を構えながら立っていたから出てくる勇気は無かったのだろう。
余っていたガソリンをその部屋にも撒いて、少しでも時間稼ぎになればとこの時はただ安易に考えてみた。火力が強ければ、もしかしたら遺伝子情報まで破壊出来ないかと、素人考えで思った。
ブルーノは自分の意思で拷問をし、自分から人間を何人も殺害した。だから私も自分の意思で復讐した。だが、トラビスは違う。ただ怯えていたんだ。我々、ヒトが恐ろしかったのか、他の実験体が恐ろしかったのか。もしくはその両方か・・・・・・
少なくとも、わが子を守ろうと必死に抱き着いていたのと、その眼差しや仕草は私も同じ”母親”だから分かるものはあった。それが決め手だったかもしれない。そう。そのように今では自分に言い聞かせている。今後の運命がどうなろうとも、私はそう言い聞かせていく。
その親としての判断がとにかく良かったのかもしれない。もし無事にトラビス親子が逃げれていたなら、なんとか私が捕まえないといけない。生ける『証拠』に、今やなるのだから・・・・・・
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