聴取データ 9
「ブルーノ・・・C-1実験体の行動について、何か見解があれば教えてくれない?」
「え・・・と、誰が殺ったか、ですかね」
「そこはもういいわ。私たちの管轄じゃ無くなったみたいだし。なぜブルーノは人間をわざわざ拷問をして、なぜ被害者がヒトの黒人種ばかりなのかってとこね。聞いた事も無いわ。人間以外の動物が拷問なんて」
「ああ・・・あの、この報告書を見て思ったのですが、もしかして・・・”たまたま”ブルーノを監視していた警備隊のみなさんが黒人の方々だったから・・・かもしれません」
「そうなの??」
「思い返せば・・・担当していた研究員も比較的、黒人さんが多かった気がします」
「んー、まぁ、可能性として無い、こともないってわね。個体の提供と出資者の意向がまるでチーム分けのように研究員が分かれているから、作業員全般に片寄りが出てしまうものね」
「1回目の脱走時、徘徊している様に見えたのも
「その時に怪我を負わされていたのも黒人種だったかもしれないわね。医療データを確認してみるわ」
「まさか・・・ブルーノやトラビスたちをイジメていたりなんてこと、無いですよね・・・・・・」
「そう・・・かもしれないわね。まぁでもそこは私たちには分からない領域よ。それより、そこまでブルーノ達には”認識できた”ということでいい?」
「そう、ですね。まず、ヒトなどの大型類人猿の殆どが『3色型色覚』で変わりはありません。小型でも2色で白、黒の色別は問題ないはずです。意思表示も5才から10才の子供と見ていいと思います」
「じゃあ・・・完全な『復讐』と『私怨』・・・か」
「???」
【聴取データ 10】
「・・・そうそう、大野教授との経緯を教えて欲しいのよ。その、2か月前からの相談ってのはなんなの?」
「あ、はい、そうですね」
「ごめんなさいね、わたしが話の腰を折っちゃったわね。今回の件を示唆するような話?」
「んー・・・あ、いえ、大事の原因だとか、関連性はあまり無いかとは思います。ある意味、個人的な、というかなんと言うか・・・・・・」
「個人的?」
「・・・えっと・・・『イヴ』についての個人的な相談、みたいな感じです。さっきも言いましたがずっと”仲良し”だった印象でしたが、その時の大野さん、なんだか脅えた様子だったんです」
「何に脅えていたの?イヴに?」
「はい。ハッキリとした原因などは教えて頂けなかったのですが、ずっと秘密裏に、個人的に研究していたのに急に・・・とにかく定期的に一緒にイヴの監視、調査をお願いされました」
「・・・べつに、それも普通のことよね」
「んー・・・なんて言えばいいか・・・作業内容の殆どが、わざわざ私が手伝わなくてもいいような内容だったりして。その時間の大半が自分のデータ解析や報告書作成をしていたぐらいです。まるで・・・そう、イヴを避けている、と言いますか、私が”間に立たされている”ような」
「・・・変な話ね」
「そう。変なんです。大野さんだけでなくイヴも・・・例えば、私はイヴに検体接種や注射1本ですら打ったことないのに、その時は・・・隔離室の向こうからですが、ずっと私を睨んでいる様に見えました」
「さっき言ってた、それまでは1回だけしかあなたとイヴも顔を合わせたりはしていないのよね?」
「はい。そうなんですよ」
「本当に、ただの女の勘、としか言いようがないのですが嫉妬のような眼差しでした」
「嫉妬・・・・・・」
「イヴはアルビーとかとは違い成長速度が早かったです。成熟に至るのも早かったのではないかと」
「発情期の盛り、ってこと?」
「んー・・・まるで『恋い仇』をみるような感じ・・・です」
「え?!まさか、イヴは大野教授に『恋』をしていたってこと?」
「・・・”私は”・・・そう感じました」
「ふぅ・・・もう、本格的に動物と見なさない方が良さそうね・・・・・・」
「・・・だから、イヴの最後・・・なんとなく分かるんです」
「まぁ、そう考えるとイヴが泣いていたり、死に際の辻褄が合って来るわね」
「あの、本当に大野さんはモスマンに殺されたのですか?」
「・・・報告ではそうなっているのよ」
「そう・・・ですか」
※近藤教授は気まずそうな表情をしている
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