聴取データ 8
「あなたはどうしてアルマスに攫われていたの?」
「私にも分からないんです・・・後で聞いて私もびっくりしました」
「どういうこと?」
「救助隊に治療を受けている時に、私は意識が戻りました。そしてその時に知らされたんです。アルマスに抱えられている所を救助されたことに・・・・・・」
「最後の記憶、気を失う直前は何があったの?」
「ああ、はい・・・そう、研究所が全面停電した直後でした。1階の特別研究室に居たのですが、モスマンの子供・・・分身の個体に襲われたんです」
「何故、あなただけ無事だったのかしら?」
「はい・・・なぜか・・・・・・」
「・・・なぜか?」
「なぜか・・・逃げようとしたのですが、顔に飛びつかれて、苦しくなって、その先は・・・・・・」
「報告では3階にいた職員の何人かは、その様に窒息した被害者が居たみたいね。全滅だったらいしいけど、何故あなたは助かったのかしら」
「・・・多分、アルビー・・・かな?」
「??」
「各階の特別研究室は、1階の実験体隔離室の様に檻の設定ではなく『部屋』なんです。その部屋の扉は錠ではなく電子ロック式だから、停電でロックが外れて出てきたんだと思います」
「なるほどね」
「・・・ああ・・・アルビー・・・・・・」
「あなたを、助けてくれたのね・・・・・・」
「あの・・・早く、私もあの子を探しに行かせてください!」
「・・・だめよ。まだ許可が下りないわ。でも、その点は安心して。あなたとは別の動機だけど、上は必死にアルビーを探している最中よ。全部隊を投じてね」
「・・・でも、見つかったらどんな処分かは分からないですよね」
「ええ、まぁ、現時点ではなんとも言えないわね。でも聞いて、私が今こうして話をしているのも、あなたが今後どうして行き、そしてどんな話をするかも、全部あなたとアルビーの今後の為なのよ。それは分かってちょうだい」
「・・・・・・はい。分かっています」
「じゃ、続きね。推測でいいから、このモスマンの子・・・単為生殖体の窒息させていく行動の意味は、解る?経験から考えてみて。この個体には繁殖能力は無いのよね?」
「どうなんでしょう・・・母体がモスマン・・・ミミズやカタツムリ、一部の爬虫類や魚類のように”単為生殖”という可能性もありますが・・・ボノボのホカホカの可能性も有ると思います」
「ホカホカ?」
「ボノボというのは別名ピグミーチンパンジーという霊長類で、アフリカの中央部コンゴに生息している通常のチンパンジーより少し小柄な種類です。この種はまるで”挨拶”をするかのように
「意味はどうでもいいわ。つまり、疑似的な繁殖行為と、ただの挨拶で殺されていったってこと?」
「あ・・・本当に『推測』ですよ。他の実験体でもよくある行動ですので、もしかしたら・・・・・・」
「よくある・・・そ、そうなのね・・・・・・」
「チンパンジーはヒトと遺伝子の違いが1.2%しか相違がありません。ウサギは染色体の数がヒトと同じなので、初期実験段階ではこの2種の遺伝子、もしくは卵子、精子を多用していたことにも関係がありそうだなと思いまして・・・・・・」
「んー・・・まぁ、可能性ね」
「はい」
「一応、あなたの精密検査の結果は問題は無かったわ。今の所、身体に異常はないのよね?他の遺体に関しては現在、病理解剖の最中ね。それでハッキリすると思うわ」
「・・・・・・」
ガチャ・・・・・・
※誰かが質疑室へ入ってくる
「・・・あら、ギャラップ博士。どうしてここに?」
「ああ、気にしないでくれ。ただのアテンド兼オブザーバーさ」
「配属先がこっちに戻ったの?」
「さあ、まだハッキリしたことは決まっていないらしい。一応、元関係者としてというのと、近藤さん、あなたと似たような立ち位置さ」
「・・・なるほどね」
※以下略
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