後発隊 討伐隊ヘッドセットカメラデータ 2
◉REC
※辺りは硝煙と埃で視界が悪くなっている
「・・・やったか」
※10Mほど先に大きな物体が横たわっていて、兵長がハンドサインを送る
バンッ!バンッ!
※指示された隊員がBオブジェクトの頭部に2発撃ち込み、確実なるトドメを駄目押しする
「ふう・・・よし、行こう」
※隊はBオブジェクトを跨ぐように研究所内を突き進む
「おい、この先のデカい部屋はなんだ?」
「はい『特別研究室』ってなってますね」
「”特別”・・・ねぇ。気をつけて行こう」
※みんな目は威勢と狼狽、両方を兼ねた眼差しをしている
「兵長!」
※後方から呼ばれる声がし直ぐ様、引き返す
「どうした」
「これを見て下さい」
※死亡したobjの足の間に一つの卵が転がっていた
「最後っ屁のつもりか・・・・・・」
※銃を向けて撃とうとする。が、ヘッドセットカメラを点けている隊員の方へ、カメラへと視線を送る
「・・・おい、2名、この”卵”を見張っておけ。もし孵化するようなことがあれば即座に始末しろ」
※指示を出すと3階の”自室兼特別研究室”へと戻る
「・・・よし、開けてくれ」
ガシャ・・・・・・
※数名に左右へと別れるハンドサイン。いくつものウェポンライトが室内を照らす。あらゆる薬品や冷却装置、遠心分離機、沢山のバイオシェーカー(培養装置)が並ぶ。奥へと続く部屋の扉を発見する
「・・・行こう。援護してくれ」
ガチャ・・・・・・
※ゆっくりとノブを回す。が、開かない
「仕方がない」
ガォンッ!
※ショットガンでドアノブの部分を撃ち抜き、急いで中に入る
・・・オギャァ、オギャァ、オギャァ・・・・・・
「・・・な・・・・・・」
※赤ん坊の泣き声が部屋中に響き渡る中、隊員たちは固まっている。状況の把握に時間が掛かっているようだ。カメラが隊員たちの視線の先へ移動する
「・・・え?!」
※カメラを起動している隊員は思わず声を上げた。そこには普通の人間の赤ん坊と、8歳児ぐらいの大きさで明らかにobjだと分かる不気味な生物とを両脇に抱えたまま、上半身が裸で死んでいる『エヴァ・ブラウン博士』の姿が映っていた
「ど・・・どういうことだ・・・・・・」
※全員が戸惑っている。赤ん坊は左脇でずっと泣き続けている。右脇ではobjがずっと乳房を、まるで授乳しているように吸い続けている
「と・・・とりあえず、赤ちゃんを奪取するんだ」
ドサッ・・・・・・
※隊員が赤ん坊を取り上げると、エヴァ博士の体のバランスが崩れたのか、椅子から倒れ落ちる。同時にobjも乳房から離れ、こちらに顔を向ける。その姿は全身に体毛は無く、粘糖質な体液で覆われウェポンライトでキラキラと綺麗に光を反射している。皮膚は所どころ高質化していて、頭頂部から背中にかけ、退化した背びれのようなものが少し伸びている。眩しいと言いたげに広げて目を覆う、その手足の指には水掻きの様なものが少し有り、飛び出している舌は細長くまるで触手のようだ
「このやろう!」
バンッ!バンッ!
「キュィィィィィ!」
・・・バシャン!
※1発、肩に命中しまるで笛の音のような叫び声で、objは部屋の最奥部に設置してあるバスタブの中へ逃げ込んだ
「エヴァさん!」
※部隊に配備された救助班の隊員がエヴァ博士の様子を診る。全身が蒼白で全く血の気が無い。objに吸い付かれていた乳房の乳頭には深い穴が開き、そこから少量の血が数滴ほど垂れていた
「あいつ・・・あの舌で・・・体液を吸っていたんだ。こんな深い傷なら普通はもっと出血するはずだ。致死量を超えて・・・吸われ続けていたんだ」
「死因は出血多量・・・か」
「・・・しかし・・・でもなんだか・・・美しいな」
※エヴァ博士の死に顔は苦痛や苦悶の表情は一切なく、少し幸せそうな微笑みを感じさせる様な、安らかな顔をしている。後の証言でこの男性隊員には、まるで聖母のように見えたと証言している・・・・・・
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