CHIMERA ~嵌合体~ 第四章『乱』
聴取データ 7
「そうだ・・・あの、大野さんと、イヴについてお話します」
「・・・ええ、お願いできる?」
「はい・・・大丈夫です。今回の事件の、大体2か月ほど前なのですが、大野さんが私の所へ相談・・・と、言いますか、お願いされたんです」
「お願い?」
「イヴについてです。一緒に見て欲しいと・・・・・・」
「・・・まぁ、別に普通のことよね?」
「先ずは、なんだか不安そうな表情をしているなぁと感じました。1度だけ、アルビー、オリバー、イヴの3人で顔合わせをしたことがあるんです。各自どのような反応を示すかという実験だったんですが、その時、あの子たちはお互いに初めての動物を見るように見つめ合い、警戒しながらも興味がある様子でした。そして、子供達の姿を見ている大野さんの目はまるで、親のように慈愛に満ちている様に私には見えたのですが・・・・・・」
「・・・あれ?カブラとは会わせなかったの?」
「あ、はい。カブラは霊長類のようなコミュニケーションとは少し違っていましたから、まだ、ヘタな刺激はお互いにさせない方がいいのでは?と、全員の意見と判断が一致しました」
「そうなのね・・・あの子も、エヴァも残念な最後だったわね」
「エヴァさん・・・でも、そうでしょうか・・・この兵士さんが感じている様に、きっと幸せだったと思います」
「まぁ・・・そうかもね・・・・・・」
「でも、なぜ、あの様な最後になってしまったのでしょうか」
「・・・あの子・・・エヴァはね、ここに来る前に自分の子供を亡くしているのよ」
「え?!・・・そうだったんですか・・・・・・」
「母国ドイツでの冷戦に巻き込まれてね」
「なんてこと・・・だからここに・・・・・・」
「ええ。きっとここでの生活は、自分の思い出したくもない過去を塗り変えるよ様な・・・そんな環境と状況だったんじゃないかな。だから・・・残念っていうのは死に方とかでなくて、ずっと本当のわが子の『アドルフ』と幸せに暮らして欲しかったのよ・・・・・・」
「そう・・・ですね」
「恐らく・・・アドルフは
「・・・じゃあ、エヴァさんにとっては『カブラも大切なわが子』だったんですね・・・・・・」
「・・・そうね。きっと、平等に愛してあげたかったんでしょうね・・・・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます