聴取音声データ 7
「 試作品ではあるけど、このスティモシーバーは全部の実験体に移植したのよね?」
「・・・あ・・・いえ、アルビー、イヴ、カブラの3体は移植をしていません」
「なぜ?」
「・・・大野さんいわく、まだ成体していないのと調教ではなく教育の成果も見たい、という理由でした」
「ふぅ・・・まるで”模範的”な回答ね」
「え?」
「あ、いえ。これも、全実験体へ移植していれば事態はまた変わっていたでしょうね」
「・・・・・・」
「・・・まぁ、結果的にはモスマンがあんなことになるなんて誰もが予測不可能だったわけだし、いまに語るのはすべて結果論ね」
「多様な遺伝子を組み合わせすぎたんです。オリバーやカブラのように、もはや通常の繁殖ではどの遺伝子、染色体が選ばれて生まれてくるか誰にも予測できなくなってきています」
「・・・嫌な予感がするわね・・・・・・」
「え?」
「・・・・・・」
【監視カメラデータ 1】
「おい、あれはなんだ?」
※研究員①が他スタッフ二名へカメラ画面を指差し確認を促す
「なんだ?ただの排便じゃないのか?」
「いや、なんか白いだろ。”卵”みたいじゃないか?」
「え?!」
「ちょっと、行くぞ!」
※三名が実験体Bの元へ走り出す
「ほ、本当だ!産卵?!している!!」
「なぜだ!だれも接触していなかったぞ!」
「は、は、早く、大野教授を!」
※一人の研究員が大野教授を呼びに走る。二人は茫然と実験体の産卵を眺めている
※大野教授が入室
「・・・おぉ、本当だ!」
※大野教授が嬉しそうに反応する
「な、なぜだ、おい、誰かモスマンに近づいたか?!」
「い、いえ、決して誰も・・・私たちも、普段はこの部屋にすら入りません」
「では、な、なぜ”産卵”しているんだ!」
※全員混乱している様子
「・・・おい、麻酔銃の準備と分析班を呼ぶんだ!」
「は、はい!」
※三名とも退出する。大野教授はふりかえり実験体を見つめながら言った
「お、おい、モスマン・・・お前、まさか・・・・・・」
【大野教授 録画日記データ 5】
◉REC
モスマンのやつ・・・まさか※単為生殖するとは・・・・・・
生命力、繁殖力が凄まじい!
”卵”を調べた
卵のような、”繭”のような
幼体から成体へと変態する過程を省略してやがる・・・・・・
母体内で幼体期を迎えさせて出産と同時に蚕化
発見が産卵直後なのかどうかがわからないな・・・・・・
何個かすでに”孵化”していた
いまは警備員と捜索隊にて研究所内を探索させているが
回収できた卵の中身はすでに成体状態だった。アポトーシス(細胞の自然死)しないのか・・・・・・
監視カメラの解析が必要だな
※単為生殖
働きアリや兵士蜂のように、繁殖目的とは別に生成する子を産むこと
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