聴取音声データ 6
「・・・あなた、このことは知っていたの?」
「研究報告書No.01514は全職員への通達で知らされていましたので。イレギュラーと、そしてE-1チュパカブラの詳細までは聞いていませんでした」
「エヴァは知っていたのかしら」
「どうでしょう、分かりません。出産後はわが子とカブラの世話と、偽装報告書の作成、大野さんの助手で忙しかったと思いますので。各々がイヴ、アルビー、カブラの担当をしてからは会話はおろか、なかなかお目に見かけたことすらありませんでしたから」
「あなたもアルバート・・・えっと、アルビーの世話をしながらで多忙だったでしょうしね」
「いえ、この最終的な実験体はどの子も会話の発声はさすがに声帯の関係上、発音はできませんがイレギュラー達とBモスマン以外はこちらの声、意図はなんとなく理解している感じでした。なので、いままでの過去の実験体に比べればまだ少し意思疎通ができて楽な部分が多かったですよ」
「へぇ、そうなの。どの程度か教えてほしいわね」
「えーっと・・・人間でいうところの”しゃべれない5歳児”の、その前後、という感覚です。個体差はありましたが。意思表示もジェスチャー、仕草で訴えてきたり、人の感情、敵意や好意といった範囲は理解していました。カブラがどうだったかは・・・わたしには全くわかりませんが」
「一応、研究のほうは順調だったわけね。皮肉だわ」
「はい・・・・・・」
【研究員 3 研究報告書No.00795】
C実験体、C-1 報告
共同実験は良好。母子ともに異常なし。
観測を継続。
C-1が成熟期をむかえ次第、次の工程へ実行予定。
【聴取音声データ 6-1】
「トラビス親子は、実際の報告書どおりなの?」
「そう、ですね。DアルマスとCブルーノ、トラビス親子は正式な報告分としていまして、わたしたちとはまた別チームが主に見ていましたので私も報告書とチームリーダーからの話しか聞いていませんが・・・聞いた話やこの報告書、定期チェックの時に見た状況とも、これといった違いはないと見ていいと思います。ちなみにブルーノとモスマンの2体は暴走事件からは、主に警備、監視隊が観ていました」
「・・・ふぅ、さて、ではこの時点でまた整理させてね。Bモスマン、C-1ブルーノ、C-2トラビスとその子供、Dアルマス、エヴァのEカブラ、大野教授のイヴ、あなたのアルビー、合計8体ね」
「はい」
「トラビスの子に名前はないの?」
「ありますよ、オリバーです」
「オリバー・・・ねぇ・・・・・・」
【研究員 3 経緯確認メール】
試作品【スティモシーバー】検討要
CD研究チームグループ
<ーーーーCDteam@yerkes.centre.co.jp>
to 〇〇 〇〇開発チーム
ーーーーdevelopmentteam@yerkes.centre.co.jp▾
D、D-1実験結果を確認。
この失敗をふまえ、C-2、C’母子の懸念点を考慮、確認求む。
必要であればチップの移植を許可いたします。
開発段階なため未完成※スティモシーバーではありますが、前回の脱走事件も考慮し調教用、追跡用としてのチップを優先という開発命令を実行し、完成しております。
全実験体への移植を検討しご回答お願いします。
≪※スティモシーバー(Stimoceiver)≫
脳埋込チップとも呼ばれ、脳に電極を埋め込み微弱な電流を流すことで脳の活動を制御することを目的とした脳に埋め込む装置である。
※以下、転送
▾宛先
大野 明<akira_ohno@yerkes.centre.co.jp>
---------- Forwarded message ---------
From: <ーーーーdevelopmentteam@yerkes.centre.co.jp>
Date:○○○○年〇月〇日 11:46
Subject: 試作品【スティモシーバー】検討要
To:CD研究チームグループ<ーーーーCDteam@yerkes.centre.co.jp>
お疲れ様です、〇〇です。
開発チームから
遠隔操作やマインドコントロールなどの機能はまだ搭載できていないそうです。
GPSでの追跡、神経系への微粒な電気ショックが可能になり緊急時の制御などにも活用できます。
GPSは衛星の感知と同等。
電気ショックはコントロール制御室からでは衛星を経由し、電波の感度次第で遠隔可能。デメリットとして大幅にGPSのズレが生じている場所では無反応。
専用のリモコンであれば半径15mの範囲に対象がいた場合に反応。ただし個別指定は不可能。半デメリットとしては径15mの範囲内の対象全てにショックを起こします。
C群とDへの移植の有無、回答お願いします。
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