CHIMERA~嵌合体~ 第二章『花』
近藤 分析長 聴取音声データ 5
「まもなくして、エヴァさんが出産しました」
「え?!・・・まさか・・・・・・」
「あ、いえ、普通の人間の子ですよ。生まれてすぐの頃に一度だけ会わせていただいて、詳細も聞きましたから間違いなさそうです」
「あ・・・そう、よかったぁ」
「その子の父親は、精子バンクから優秀な遺伝子をかけ合わせた『超ヒューマン』っていう名目みたいです」
「超・・・ヒューマンねぇ」
「試験的なもののようでした。それでいいのかとエヴァさんに一度聞いてみましたが、なんだか満足しているようでそもそも結婚とかは元々する気もないし興味もないと言っていましたし・・・あ、だから出産っていうか、”試験管ベイビー"なんですけど・・・異種キメラ化は当然で、遺伝子操作も一切していないと断言はしていました」
「あの子らしいわね。でも、そのエヴァの子の情報もこっちには来ていないのだけど・・・はぁ、どうせ、上の男どもは重要視していないのね、多分。普通の人の子には興味すらないってわけね」
「こんな商売しているぐらいですからね」
「そうね。私たちも含めて・・・大野教授のことだけを責められないわね」
「・・・・・・」
「その、エヴァの子はいまどうしてるのかしら」
「事件のあと、他の方から聞きましたが無事に保護されてたそうです」
「そう、よかったわね。あ、その他生存者1名ってのはこの子のことね」
「・・・みたいですね」
「エヴァ・・・あの子も変な子だったわね」
「・・・まさかエヴァさん、わが子も実験のなにかに使用するつもりだったんじゃあ・・・・・・」
「・・・・・・」
【研究報告書No.01514 (未提出)】
全職員へ通達。
B実験体のエコー、精密検査の結果
・雌 雄 同 体
B実験体の監視員、教育班、関係者、全スタッフは十分に注意せよ。
イカやタコのような軟体動物にみられる”交接腕”が別にあり。尻尾の先端が陰茎として、精包を異性の子宮内部、卵巣へと受精させる模様。その方法ならびにD体への受精方法はまだ不明。
詳細などはまだ調査中。
念のため全職員、特に女性職員はB実験体への覚醒下での接触を禁ずる。
同時に過剰な麻酔等の投与も配慮されたし。検査頻度も見直す。
【研究員 2 研究報告書No.00787 (未提出)】
大野 研究長 宛て
死亡済みのE実験体、解剖結果報告
・消化器系統の変異
・繁殖機能の変異
・経 口 摂 取 繁 殖
トリッパ (tripe)
消化する袋状ではなく、腸のような栄養や水分を吸収するように精子を吸収したあとに反芻し第一胃へと送り返される。もしくは吐き出される。
ターゲットの捕食、ならびにオス個体の”精巣を捕食”し生命活動としてのエネルギー補給と繁殖の両方を兼ねていた可能性高。
E-1の生体も懸念。精密検査も急がれたし。
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