研究報告書No.01296 (未提出)
MISSION θ theta(シータ)
実験体D’の受精卵をIVF-ETにて培養。
染色体数は23×46ヒトに合わせる。そのさいに有効的な遺伝子操作を仕込む。
経過は良好。
ヒト受精卵を制限酵素で切れ目を入れたベクターに同じ種類の制限酵素で処理した任意のDNA分子(実験体C)を挿入、DNA連結酵素によって結合させたのちベクターを取り込みやすくする。
理論上ではこのシータも完成に近いはずである。
成長、成熟速度は他個体に比べ、やや緩やかである。時間を要す。
【研究報告書No.01301 (未提出)】
不確定要素の為、一時的にこのプロジェクトを
MISSION λ lambda(ラムダ)とする。
実験体C-2とDが無事に出産を果たす。
二体とも想定よりも早い出産。成長速度もこれまでの個体の約1.5倍。
早速、遺伝子解析へと移る。
外見上の特徴は、E体に近い。
MISSION γ gamma(ガンマ)前例の失敗をふまえ、母体と子体を引き離さずに幼児期を共にさせる。
それぞれの遺伝情報は残しているためいつでもクローン生成は可能。
【聴取音声データ 3-1】
「・・・少し、整理させてもらっていい?」
「はい」
「報告では5体だったのが、いまの話の時点で実験体はA、Bキメラ、C-1ブルーノ、C-2トラビス、C-2の子、Dアルマス、Dの子、E-1、E-2、合計9体ってことでいい?」
「いまのこの報告書段階では、そうですね」
「アルバートって実験体は、トラビスか、アルマスの子ってこと?」
「・・・いえ、このミッション・シータ、IVF-ETでできた子のことです」
「では、合計10体ってことね」
「えっと・・・そのあとすぐにAとE-2は死にました。A体はアフリカ種からの霊長類キメラです。いわば原始に近いカテゴリで、D体はそこにアジア、欧州の種を組み込み、言わば霊長類の雑種。A体の親世代も短命でして、その原因は1926年のソ連の実験データを復元したクローンだからです。寿命決定遺伝子やテロメアの解明、コントロールまでは現代の科学では解明できてはいません。E-2はさきに死んだEイレギュラーだった2体とおなじく・・・おそらく遺伝子的にもイレギュラーで奇形因子にての寿命かと結論付けています」
「では・・・1、2・・・計8体ね」
「・・・いえ、もう1体、大野さんは隠していました」
「あ・・・それが、今回の・・・・・・」
「はい『イヴ』です。イヴについてはエヴァさんも知らなかったようで、一時期ですが不満をこぼしていました」
「このイヴについては、なんの報告書もデータもないの。詳しく聞かせてくれる?」
「はい、そのつもりです。でも、生まれた経緯は本当に知りません。大野さんの自室で隠すように作り、育てていたようですので。大野さんから約2か月前の告白で聞いた範囲での話から推測、私自身が接触した部分のみになりますが・・・・・・」
「全然、かまわないわよ」
「あ、その前に、その後イレギュラー体の残りの1匹が卵を産みました」
「え?!”卵”??」
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